事業再構築指針とは
事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)において定められた、「事業」を「再構築」するという計画の活動の指針を示したもの。
令和3年に制定され、この指針はコロナ禍、アフターコロナと時間が経つにつれ改訂され、現在の最新版は令和6年4月23日に改訂されたものになっている。
この指針に定義する「再構築」の分類は、
- 新市場進出
- 事業転換
- 業種転換
- 事業再編
- 国内回帰
- 地域サプライチェーン維持・強靱化
の6種類となっている。
新市場進出とは
定義
新市場進出とは、中小企業等が主たる業種(売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業をいう。以下同じ。)又は主たる事業(売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく中分類、小分類又は細分類の産業をいう。以下同じ。)を変更することなく、新たな市場に進出することをいう。
日本標準産業分類の主たる業種、事業を変更することなく、新たな市場へ進出すること。
もっとわかりやすく言うと新市場進出とは、会社が今までの仕事や業種を変えずに、新しいお客さんや新しい場所で商品を売ることをいいます。
新たな市場とは?
既存事業では対象でなかったユーザー相手のことです。
(法人/個人、業種、性別・年齢、所得、行動特性等)を持つ顧客層を対象とする市場を指す。
新市場進出の条件
新市場進出に当てはまるための条件は次の通りです:
- 新しい製品やサービスが必要
- その会社にとって、新しい製品や商品、サービス、またはその提供方法が新しいものであること。
- 例:お菓子屋さんが今までチョコレートだけを売っていたけど、新しく健康に良いクッキーを作って売ることにした。
- 新しい市場で売る
- その会社にとって、新しい市場で製品や商品、サービスを提供すること。
- 例:そのお菓子屋さんが、地元の市場だけでなく、全国のスーパーマーケットにも商品を売るようになること。
- 売上や付加価値が増える見込み
- 次のどちらかの条件を満たすこと:
- 事業計画期間が終わった後、新しい製品やサービスの売上高や付加価値額が総売上高の10分の1以上または総付加価値額の15%以上を占めること。
- 最近の年度の決算で売上高が10億円以上で、事業再構築を行う部門の売上高が3億円以上の場合、新しい製品やサービスの売上高や付加価値額がその部門の売上高の10分の1以上または付加価値額の15%以上を占めること。
新市場進出に当てはまらない例
次のどれかに当てはまる場合、新市場進出とは言えません:
- 市場が同じ場合
- 既存の製品やサービスと別のものだけれど、同じ市場で売る場合。
- 例:お菓子屋さんが今まで売っていたチョコレートの代わりに新しいクッキーを同じ市場で売る場合。
- 市場の一部だけを対象とする場合
- 既存の製品やサービスの市場の一部だけをターゲットにする場合。
- 例:お菓子屋さんが今まで売っていたチョコレートの一部だけを変えて新しいクッキーにする場合。
- 商圏が異なるだけの場合
- 既存の製品やサービスの市場は同じで、販売地域だけが違う場合。
- 例:お菓子屋さんが地元の市場から隣町の市場に変えて同じチョコレートを売る場合。
まとめ
新市場進出は、今までとは違う新しい製品やサービスを新しい市場で売ることです。ただし、単に販売地域を変えたり、同じ市場で少し違うものを売るだけでは、新市場進出にはなりません。
事業転換とは
定義
事業転換とは、中小企業等が新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更することをいう。
事業転換とは、会社が新しい製品を作ったり、新しい商品やサービスを提供することで、今の主な仕事の種類(業種)を変えずに、会社のメインの仕事を変えることです。
事業転換の条件
事業転換に当てはまるための条件は次の通りです:
- 新しい製品やサービスが必要
- その会社にとって、新しい製品や商品、またはサービスが新しいものであること。
- 例:お菓子屋さんが新しくグルテンフリーのクッキーを作ることにしました。
- 新しい市場で売る
- その会社にとって、新しい市場でその製品や商品、サービスを提供すること。
- 例:そのお菓子屋さんが、健康志向の人たち向けにグルテンフリーのクッキーを販売することにしました。
- 売上が一番高い事業になること
- 事業計画が終わった後に、新しい製品やサービスが会社の売上で一番大きな部分を占めることが期待されること。
- 例:グルテンフリーのクッキーの売上が、今までの普通のクッキーの売上を超えることが期待されています。
事業転換に当てはまらない例
次の場合は、事業転換には当てはまりません:
- 売上が変わらない場合
- 事業の前後で、一番売上が高い事業が変わらない場合。
- 例:お菓子屋さんが新しいクッキーを作るけど、普通のクッキーの売上が一番高いまま変わらない場合。
まとめ
事業転換は、今の仕事の種類を変えないで、新しい製品やサービスを作って、新しい市場で売ることです。そして、その新しい製品やサービスの売上が、会社の中で一番高くなることが期待される場合です。でも、もし売上が今と変わらないなら、事業転換にはなりません。
業種転換とは
定義
業種転換とは、中小企業等が新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更することをいう。
簡単に言うと、業種転換は会社が今までの仕事の種類を変えて、新しい種類の仕事を始めることです。
業種転換の条件
業種転換に当てはまるための条件は次の通りです:
- 新しい製品やサービス
- その会社にとって、新しく作る製品や提供する商品、サービスが新しいものであること。
- 例:パン屋さんが、新しくパスタ料理を作り始めること。
- 新しい市場
- その会社にとって、新しい市場でその製品や商品、サービスを提供すること。
- 例:そのパン屋さんが、今までパンを売っていた市場とは違う、新しい市場でパスタを売り始めること。
- 売上が一番高い業種になること
- 事業計画が終わった後に、新しい製品やサービスを含む業種が会社の売上で一番大きな部分を占めることが期待されること。
- 例:パスタの売上が、パンの売上を超えて会社の中で一番高くなることが期待されている。
業種転換に当てはまらない例
次の場合は、業種転換には当てはまりません:
- 売上が変わらない場合
- 事業の前後で、一番売上が高い業種が変わらない場合。
- 例:パン屋さんが新しいケーキを作り始めたけど、パンの売上が一番高いまま変わらない場合。
まとめ
業種転換は、今の仕事の種類を変えて、新しい種類の仕事を始めることです。そして、その新しい仕事が会社の中で一番高い売上を持つことが期待される場合です。でも、もし売上が今と変わらないなら、業種転換にはなりません。
事業再編とは
定義
事業再編とは、会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新市場進出、事業転換又は業種転換のいずれかを行うことをいう。
事業再編とは、会社が組織を大きく変えることを言います。これには、他の会社と一緒になる(合併)、会社を分ける(会社分割)、株を交換したり移したりする(株式交換、株式移転)、または事業を他の会社に渡す(事業譲渡)などの方法があります。そして、これらの変化を通じて、新しい形で新しい市場に進出したり、事業や業種を変えたりすることを指します。
事業再編の条件
事業再編に当てはまるための条件は次の通りです:
- 組織再編行為を行うこと
- 会社が組織を大きく変えることをする。
- 例:他の会社と一緒になる(合併)や、会社を分ける(会社分割)など。
- 新しい市場に進出するか、事業や業種を変えること
- 会社が新しい市場に商品を売りに行く、新しい種類の仕事を始める、または今までとは違う仕事を始める。
- 例:パン屋さんが新しくサンドイッチを作って売り始める(事業転換)や、パン屋さんがカフェを開く(業種転換)。
まとめ
事業再編は、会社が大きく変わって新しい市場に進出したり、今までとは違う仕事を始めることです。このためには、まず組織を変えることが必要です。
国内回帰とは
定義
国内回帰とは、海外で製造等する製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備することをいう。
簡単に言うと、海外で作っているものを、日本で新しい技術を使って作るための場所を作ることです。
国内回帰の条件
国内回帰に当てはまるための条件は次の通りです:
- 海外から日本に工場を作ること
- 小さな会社が、今まで海外で作っていた製品を、日本で作るための工場を作ること。
- 例:おもちゃ会社が、海外の工場でおもちゃを作っていたけど、それを日本に工場を作って日本で作ることにする。
- 新しい技術を使うこと
- 小さな会社が、新しい技術を使って製品を作ること。
- 例:おもちゃ会社が、最新のロボットや機械を使っておもちゃを作ること。
- 売上が増える見込みがあること
- 次のどちらかの条件を満たすこと:
- 事業計画が終わった後に、新しい工場で作る製品の売上が、全体の売上の10分の1以上を占めることが期待されること。
- 会社の売上が直近の年度で10億円以上あり、その中で事業再構築を行う部門の売上が3億円以上の場合、新しい工場で作る製品の売上がその部門の売上の10分の1以上を占めることが期待されること。
- 次のどちらかの条件を満たすこと:
まとめ
国内回帰は、今まで海外で作っていた製品を日本で新しい技術を使って作るための場所を作ることです。そして、その新しい工場で作る製品が、会社の売上で大きな部分を占めることが期待される場合に当てはまります。
地域サプライチェーン維持・強靱化とは
定義
地域サプライチェーン維持・強靱化とは、地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠であり、その供給に不足が生じ、又は、生ずるおそれのある製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備することをいう。
地域サプライチェーン維持・強靱化とは、地域で必要な製品を作るために、新しい技術を使った工場を日本に作ることです。その製品が不足したり、足りなくなる心配があるときに、この工場がとても重要になります。
地域サプライチェーン維持・強靱化の条件
地域サプライチェーン維持・強靱化に当てはまるための条件は次の通りです:
- 必要な製品を作る工場を作ること
- 会社が地域でとても大事な製品を作るための工場を日本に作ること。
- 例:町でマスクが足りなくなる心配があるときに、その町に新しいマスクを作る工場を作ること。
- その製品が本当に必要で、足りなくなる心配があることを証明できること。
- この計画が地域の重要な産業として認められていること。
- 新しい技術を使うこと
- 会社が新しい技術を使って製品を作ること。
- 例:最新の機械を使ってマスクを作ること。
- 売上が増える見込みがあること
- 次のどちらかの条件を満たすこと:
- 事業計画が終わった後に、新しい工場で作る製品の売上が全体の売上の10分の1以上を占めることが期待されること。
- 会社の売上が直近の年度で10億円以上あり、その中で事業再構築を行う部門の売上が3億円以上の場合、新しい工場で作る製品の売上がその部門の売上の10分の1以上を占めることが期待されること。
- 次のどちらかの条件を満たすこと:
まとめ
地域サプライチェーン維持・強靱化は、地域でとても大事な製品が足りなくなる心配があるときに、新しい技術を使ってその製品を作るための工場を日本に作ることです。そして、その工場で作る製品が会社の売上で大きな部分を占めることが期待される場合に当てはまります。
参考
- 事業再構築補指針(原文)⇒外部リンク(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/download/shishin012.pdf)※この項目の引用はすべて本文章より。
- 事業再構築の手引き