令和5年3月より開始(締め切りは6月30日まで)されている第10回事業再構築補助金では、前回までと比べて大きく枠組みが変更されています。
先に結論を言うと、多くの枠組みで要件が緩和されているので、より多くの中小・中堅企業が申し込みできるようになっているのが特徴です。
また一部枠組みでは、以前申請・採択を受けた事業主が、もう1度申請・採択を受けることができるようになっているので、再度活用することもできます。
今回は、第10回事業再構築補助金の変更点と新設された予算区分について詳しく解説していきます!
第10回事業再構築補助金の変更点と新予算区分の概要
2022年までの申請枠 | 今回の申請枠 |
l 緊急対策枠・回復・再生応援枠
l 最低賃金枠 l 通常枠 l 大規模賃金引上枠 l グリー成長枠 |
l 物価高騰対策・回復再生応援枠
l 最低賃金枠 l 成長枠 l 産業構造転換枠 l サプライチェーン強靱化枠 l グリーン成長枠 |
上記の表は2022年までのものと、今回の申請枠を比べています。
通常枠が「成長枠」と名称が変更になり、新たに産業構造転換枠やサプライチェーン強靱化枠が新設されているのがわかります。
さらに前回にもあったグリーン成長枠では、従来と比べると要件が緩和された「エントリー枠」が新設されているので、より使い勝手の良い補助金となっているのが特徴です。
ここからは第10回からの事業再構築補助金の変更点について解説していきます。
1.産業構造転換枠やサプライチェーン強靱化枠の新設
新予算区分 | 補助額 | 補助率 |
産業構造転換枠
(新設) |
l 2,000万円
l 4,000万円 l 6,000万円 l 7,000万円 ※廃業を伴う場合は2,000万円増額 |
中小…1/2
中堅…1/3 |
サプライチェーン
強靱化枠 (新設) |
5億円 | 中小…1/2
中堅…1/3 |
第10回の事業再構築補助金では、新たに「産業構造転換枠」と「サプライチェーン強靱化枠」の2つが新設されています。
まず産業構造転換枠は、過去から今後のいずれか10年間で、市場規模(製造品出荷額、売上高など)が10%以上縮小する業種や業態に属していることを要件としています。
また廃業を伴う場合は、最大で2,000万円の廃業費が上乗せされます。
ガソリン車やハイブリッド車の部品製造に携わる企業に対する枠になるのではないかと考えられており、採択率が優遇される可能性があります。
次にサプライチェーン強靱化枠は、海外で製造する部品などの国内回帰を進めて、日本でのサプライチェーンの強靱化や、地域産業の活性化に取り組む事業主が対象になります。
なおサプライチェーン強靱化枠は、設備投資を行う事業場内の最低賃金を地域の最低より30万円以上高くすることを追加要件として設けており、最大で5億円の補助を受けられる大きな区分となります。
2.成長枠(旧通常枠)の変更
2022年度(変更前) | 2023年度(変更後) | |
補助額 | l 2,000万円
l 4,000万円 l 6,000万円 l 8,000万円 |
l 2,000万円
l 4,000万円 l 5,000万円 l 7,000万円 |
補助率 | 中小…2/3
中堅…1/2 |
中小…1/2
中堅…1/3 |
その他 | 売上減少要件あり
新規事業に指定なし |
売上減少要件なし
指定された事業しか申請できない ※指定外の場合は要件を満たす必要がある |
前回までは通常枠という名称でしたが、第10回の事業再構築補助金では「成長枠」という名称に変更になっています。
変更になったのは名称だけではなく、上記の表のように補助額や補助率も変更になっています。
前回までと比べて、上限補助額や補助率が減少しましたが、売上高減少要件が撤廃されているので、今回はほとんどの中小企業や中堅企業が申し込みできるようになっているのが特徴です。
しかし今回から新たに「市場規模要件」が追加されていて、事務局が指定した業種や業態の新規事業のみが申し込みできます。
成長枠の対象となる業種・業態については、中小企業庁のホームページで公開されています。
また指定外の業種や業態については、応募時にデータを提出して要件を満たせば対象となります。
3.グリーン成長枠の要件緩和
2022年度(変更前) | 2023年度(変更後) | ||
補助額 | 中小…上限1億円
中堅…上限1.5億円 |
エントリー枠 | l 4,000万円
l 6,000万円 l 8,000万円 l 1億円(中堅のみ) |
スタンダード枠 | 中小…上限1億円
中堅…上限1.5億円 |
グリーン成長枠については、これまでの要件と同じ内容になっていますが、要件が緩和される新枠が登場しています。
エントリー枠とスタンダード枠の2つが新設されていて、スタンダード枠はこれまでと同じ要件のままになっています。
エントリー枠については、以下の要因となっていてこれまでよりも緩和されているのが特徴です。
1.付加価値額の年率平均4.0%以上増加 |
2.1年以上の研究開発や技術開発、または従業員の5%以上 |
3.事業終了後、3〜5年で給与支給総額を年率2%以上増加させること |
しかしエントリー枠ではこれまでよりも補助額が低くなっているというデメリットもあります。
4.回復・再生応援枠・緊急対策枠が「物価高騰対策・回復再生応援枠」に変更
2022年度(変更前) | 2023年度(変更後) | |
補助額 | l 500万円
l 1,000万円 l 1,500万円 l 2,000万円 l 3,000万円 l 4,0000万円 |
l 1,000万円
l 1,500万円 l 2,000万円 l 3,000万円 |
補助率 | 中小…3/4
中堅…2/3 ※通常枠の場合 |
中小…2/3
中堅…1/2 ※成長枠の場合 |
新型コロナや物価高による影響で、業況が厳しい事業者に向けて、これまでの回復・再生応援枠・緊急対策枠が「物価高騰対策・回復再生応援枠」に変更されています。
上記の表のように補助額と補助率が変更になっている他に、これまでは売上減少要件が30%以上だったのが、10%以上で申し込めるようになっています。
これによって、より多くの中小・中堅企業が申し込めるようになっているのが特徴で、業況が苦しい事業者の賃上げを支援する「最低賃金枠」も第10回でも変更はありません。
5.過去に採択された事業者が一部で2回目も申請できるようになった
これまでの事業再構築補助金では、1事業者に対して1採択という原則をとってきましたが、第10回からはグリーン成長枠とサプライチェーン強靱化枠でのみ、2度の申請と採択が認められるようになりました。
- グリーン成長枠以外で、1度目の採択を受けた事業主で、再度「グリーン成長枠・産業構造転換枠・サプライチェーン強靱化枠」で申請したい場合
- グリーン成長枠で、1ドの採択を既に受けているが、再度「サプライチェーン強靱化枠」で申請したい場合
過去に申請・採択を受けた場合でももう1度申請・採択を受けられるようになりましたが、支援を受けられるのは2回が上限となります。
まとめ
第10回の事業再構築補助金では、これまでの通常枠が「成長枠」となり要件が緩和され、新たに産業構造転換枠とサプライチェーン強靱化枠が新設されています。
他にも変更点が多く、なかには補助額や補助率が改悪されたものもありますが、その分要件が緩和されているので、より多くの中小・中堅企業が申請できるようになっています。
またグリーン成長枠とサプライチェーン強靱化枠では、以前に申請・採択を受けた事業主がもう1度申請・採択を受けられるようになっているので、再度活用することができるようになっています。
第10回の事業再構築補助金でも事業計画書など申請書類を用意する必要があるので、キタゴウ行政書士事務所では事業計画書の策定やご相談を承っておりますのでご相談ください。