ものづくり補助金 14次公募枠より、グリーン枠が新しくなります。
ものづくり補助金のグリーン枠とは何か、その目的とは。申請に関する要件などを解説します!
ものづくり補助金のグリーン枠とは
事業再構築補助金にもグリーン成長枠というのがありますが、このものづくり補助金では似て非なるものです。
ものづくり補助金の場合は、「温室効果ガスの排出削減」という大目標があります。
さて、その「温室効果ガスの排出削減」について、環境省に「温室効果ガス排出削減等指針」が公開されております。
また、経産省では「ビヨンド・ゼロ 実現までのロードマップ」として温室効果ガスの排出削減だけでなく、グリーンイノベーション、カーボンニュートラルも含めて政府の施策を含めて公開されておりますので、ご覧になっていただければと思います。
まとめますと、ものづくり補助金のグリーン枠では、温室効果ガス排出削減の取組に対し支援となります。
公募要領より概要を引用します。
温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
そのため、この申請類型に応募するためには要件として下記の項目を満たす事業計画であることが必須となります。
(1)次の①又は②に該当する事業であること。
①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発
(例:省エネ・環境性能に優れた製品・サービスの開発、非石油由来の部素材を用いた製品・サービスの開発、廃棄物削減に資する製品・サービスの開発 等)
②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善
(例:生産工程の労働生産性向上を伴いつつ脱炭素化に資する設備投資、水素・アンモニアを活用する設備導入による燃焼工程と生産プロセスの最適化、複数ラインの作業工程を集約・高効率化 等)
※ ②について、直接、設備投資に関係のない炭素生産性向上を伴う取組は、該当しません。(例:社内全体での節電対策、設備投資による間接的な炭素排出量の削減等)(2)3~5年の事業計画期間内に、事業場単位または会社全体での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること。
少し解説すると、温室効果ガスの削減取組に当たって革新的な製品やサービスの開発のほか、「炭素生産性向上」というワードがあります。さて、炭素生産性とは、付加価値額をエネルギー起源二酸化炭素排出量で割るとありまして、このエネルギー起源二酸化炭素排出量ですが、求めるために経産省ではコチラにツールが用意されております。
簡便に求められるツールという事では、正直なくて、ある程度悩ましく調査などが必要になってきますので、まずはこの申請枠をお考えの場合はこの「炭素生産性」を求めることからはじめてゆきましょう。
3つの申請類型
現在行われているグリーン枠ではその取組内容や事業ステージにより申請枠が3つあります。
申請枠とその補助金額は下記の通りです。
申請類型 | 補助金額 |
エントリー類型 | 従業員数 5 人以下 :100万円~ 750万円 6人~20人 :100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円 |
スタンダード類型 | 従業員数 5 人以下 :750万円~1,000万円 6人~20人 :1,000万円~1,500万円 21人以上 :1,250万円~2,000万円 |
アドバンス類型 | 従業員数 5 人以下 :1,000万円~2,000万円 6人~20人 :1,500万円~3,000万円 21人以上 :2,000万円~4,000万円 |
上記の申請要件に加え、それぞれの申請枠に応じた申請要件があります。
個人的な感想として、やはり、エントリーよりもスタンダード、スタンダードよりもアドバンスといったように目標や要件が厳しいかなと思います。
まずはエントリー類型です。
1.エネルギーの種類別に毎月使用量を整理し、事業所のCO2の年間排出量を把握している。
2.事業所の電気、燃料の使用量を用途別に把握している。
どちらかを満たすこととなっております。
これに関しては「炭素生産性1%向上要件」を満たすうえで把握しておかなければいけない項目ですので、つまるところ、ものづくり補助金のグリーン枠の「通常枠」といったところでしょうか。(あまりいい表現ではないですね・・)
そして、スタンダード枠です。
1.エネルギーの種類別に毎月使用量を整理し、事業所のCO2の年間排出量を把握している。
2.事業所の電気、燃料の使用量を用途別に把握している。
エントリーのこの2項目に加えて、
3.本事業で開発に取り組む製品・サービスが、自社のみならず、業界・産業全体での温室効果ガス削減に貢献するものである。
4.小売電気事業者との契約で、一部でも再生可能エネルギーに係る電気メニューを選択している。
5.自社で太陽光やバイオマスなど再生可能エネルギーでの発電を導入している。
6.グリーン電力証書を購入している。
7.省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度(J-クレジット制度)があるが、この制度を活用し、自社での温室効果ガス削減の取組を環境価値として売却している。
この項目のうちいずれか1つを満たす必要があります。
注意点ですが、まずは5。こちらこれからのものづくり補助金の経費として再生可能エネルギーの発電設備を参入する事はできません。
6のグリーン電力証書、これはどういったものかですが、ウィキペディア先生より引用しますと
再生可能エネルギーによって得られた電力の環境付加価値を、取引可能な証書に(=証券化)したもの、またはそれを用いる制度を指す。再生可能エネルギーに対する助成手法の一つである。グリーン電力制度、グリーン証書取引制度などとも呼ばれる。
通常の電力購入に加えて、この証書を購入しておくことで、プレミアム分の上乗せを支払うことになりますが、その上乗せ分は、電力会社の再生可能エネルギーに対する助成金にまわることになり、まぁ、自社で再生可能エネルギーを取り扱っていなくても、こうした事業に貢献できるというメリットがあります。
7のJ-クレジット制度ですが、「省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度」ということです。
ここまでで割と難しいと感じるかと思いますが、言葉や耳慣れない言葉などで感じるだけでありまして、取り組もうと思えば事業計画として行うことのできる制度がほとんどです。
では、極め付きの「アドバンス」類型です。
まずはエントリーの要件を満たし、
1.エネルギーの種類別に毎月使用量を整理し、事業所のCO2の年間排出量を把握している。
2.事業所の電気、燃料の使用量を用途別に把握している。
スタンダードの項目のうち、「2つ以上」を満たすこと、
3.本事業で開発に取り組む製品・サービスが、自社のみならず、業界・産業全体での温室効果ガス削減に貢献するものである。
4.小売電気事業者との契約で、一部でも再生可能エネルギーに係る電気メニューを選択している。
5.自社で太陽光やバイオマスなど再生可能エネルギーでの発電を導入している。
6.グリーン電力証書を購入している。
7.省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度(J-クレジット制度)があるが、この制度を活用し、自社での温室効果ガス削減の取組を環境価値として売却している。
そして、下記のいずれかを満たしてゆくことが必要になります。
8.SBT(Science Based Targets)若しくはRE100に参加している。
9.エネルギーの使用の合理化等に関する法律(通称:省エネ法)の事業者クラス分け評価制度において『Sクラス』に該当するとされたこと(原則、公募締切時点で「令和3年定期報告書分」として資源エネルギー庁ホームページにて、『Sクラス』として公表されていることが確認できること)
10.2022 年 12 月 31 日以前を起点とし、2019 年度以降に以下のいずれかの事業における省エネルギー診断を受診している。または、地方公共団体で実施する省エネルギー診断を受診している。
○「無料省エネ診断等事業及び診断結果等情報提供事業」
○「エネルギー利用最適化診断事業及び情報提供事業」
○「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業」
○「地域プラットフォーム構築事業」
では、見てゆきましょう。
SBT(Science Based Targets)は、下記に引用します。
Science Based Targetsは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。
そして、RE100ですが、
RE100は、事業を100%再エネ電力で賄うことを目標とする取組のことです。
これに参加していることが要件とあり、「じゃあ参加する」ともなかなかいかない取組にもなっております。
SBTの概要資料⇒(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20230110.pdf)
RE100の概要資料⇒(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/RE100_gaiyou_20230110.pdf)
それだけ、アドバンス(前進)類型は”ガチ”な取組という事ですね。
省エネ法の事業者Sクラスについて⇒(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/institution/data/classify.pdf)
可能性としては、最後の10がこれからでもイケそうでしょうか。いやいや、これも環境省のガチな省エネ診断になりますので、よくよく確認してください。
それだけ、アドバンス枠はガチな要件となります。気合い入れて準備に時間をしっかりかけましょう。
グリーン枠の経費に関する注意点
経費に関する項目は全枠共通ですが、グリーン枠について、「機械装置・システム構築費」で、1点、注意点があります。
グリーン枠のうち、既存の機械装置(自社で購入、リースを問わない)を補助事業で購入する機械装置に入れ替える場合に限り、その撤去・廃棄費用を補助対象経費として認めます。なお、既存の機械装置を売却した場合は、当該売却額より撤去費用が大きいときに限り、その差額分を対象経費とします。但し、補助事業で購入する機械装置を超える額の費用は認めません。
まぁ、どういうことかというと、温室ガス削減のために既存の設備で電力を喰いまくる設備から節電などが可能な設備に入れ替えを伴う場合、撤去・廃棄費用も経費にしてもいいよと。
売ってもいいですが、売るより撤去する方が高い。(売却益が生じない場合)のみ、差額を対象に出来ます。例:売却額 100万円、撤去費用150万円、対象経費=(売却額100万円ー撤去費用150万円)ということで、撤去費用として50万円を参入することが出来ます。
また、繰り返しになりますが、グリーン枠だからといえ、「再生エネルギーの発電を行うための発電設備及び当該設備と一体不可分の附属設備(太陽光発電を行うためのソーラーパネルなど) 」は対象経費に出来ません。敢えて言うなら、それは環境省の補助金でカバーしているものにもなります。
事業計画書作成上の注意点・グリーン枠の審査項目
グリーン枠では通常枠の審査項目に合わせて、やはり上記の要件審査と着眼点・審査項目があります。
グリーン枠の申請においては、様式3を用いて、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加させる具体的な計画内容と、これまでに自社で実施した温室効果ガス排出削減の取組内容の有無やその効果等の内容を、具体的かつ詳細に記載してください。事業計画書と内容が重複することは、差し支えありません。
様式3とはグリーン枠では必須となる申請書類でエクセルに記載します。
審査項目では、下記の項目が見られることになります。
(5)炭素生産性向上の取組等の妥当性(グリーン枠のみ。【様式3】を元に審査します。)
① 炭素生産性を向上させるための課題が明確になっており、温室効果ガスの排出削減等に対して有効な投資となっているか。
② 炭素生産性を向上させるための取組内容が具体的に示されており、その算出根拠、効果が妥当なものとなっているか。
③ 設備投資の効果が定量的に示されており、その算出根拠が妥当なものとなっているか。また、本事業の目標に対する達成度の考え方、見込みが明確に設定されているか。
④ 温室効果ガスの排出削減、エネルギー消費削減等に資する継続的な取組が実施されているか。
つまり、事業計画書ではしっかりと事業のアクションプランや革新性などを記載し、グリーン枠独自の「様式3」で重点的に温室効果ガスの削減に関する取組が見られてゆく事になります。
加点項目
グリーン枠については1点、追加加点項目があります。
取引先の事業者がグリーンに係るパートナーシップ構築宣言をしている事業者(グリーン枠のみ)
追加で必要となる書類
申請時に、通常枠の書類に加え、グリーン枠では下記の書類が必要となります。
炭素生産性向上計画及び温室効果ガス排出削減の取組状況という書類で、これは【様式3】という様式に記載します。
これについては1月28日現在、様式が未公開でして、公開され次第、見て行こうと思います。
正直、審査においても最重要書類となるかと思いますので、要チェックです。
簡易な取り組みではなく、「ガチ」な取組であることが必須
事業再構築補助金でもそうですが、グリーンイノベーション事業というのは、国の重点政策でもありますので、こうして経産省の補助金にも反映されております。
重点的に支援されるという事で、補助金額も高いものとなっておりますが、その分、目標達成に資するような要件が求められます。
いきなり「アドバンス」という枠では難しくても、近い将来的に「SBT」の中小企業版に参加できるような目標や省エネ診断を受けられる、また、省エネ法で「S」のランクへランキングされるような事業を目標とするような、しっかりとした短中期的な目標を掲げて取り組んでゆくべきでしょう。
こうした取り組みに対し、「事業も加速させ、そして炭素生産性をあげたい」あるいは「脱炭素の取組で地域内で事業を牽引してゆくような事業者になりたい」といった意欲的な事業であることが重要です。
本申請枠については関わる事業者やコンサルタント、あるいは大学教授などの専門家の力も借りることも多いと思います。
こうした中、将来にわたりしっかりと補助事業を遂行し、実行できる右腕として、あるいは貴社の「事務局」として
ワタクシを選んでいただければこれ以上の喜びもありません。
お問い合わせはどうぞお気軽に!