新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

最終更新日:2026年8月13日(第1回公募要領1.1版(令和8年7月17日改訂)ベース。応募締切は当初から2回延長されており、公募回が進むごとに変わる可能性が高い制度です。申請をお考えの方は、必ず公式サイトの最新スケジュールをご確認ください)

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは

この補助金について書くのは、正直まだ少し早いと感じています。第1回公募が始まったばかりで、採択結果もまだ出ていません。過去の案件からお話しできる実務エピソードもまだありません。そのため、今回はまず制度の成り立ちからご説明します。

ご存知の方も多いと思いますが、これは「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」の新規公募が終了し、その後継として登場した制度です。
ただし公式サイトにも「異なる補助金です」と明記されている通り、単なる名称変更ではありません。
旧制度、そして「中小企業新事業進出補助金」の枠組みを、3つの枠に再編し直した新しい制度、と理解していただくのが正確だと思います。

2026年の骨太方針で語られていた「補助金の統廃合」が、実際どういう形で運用に降りてくるのかを見る上でも、参考になる事例だと考えています。

公募スケジュール(第1回)

項目 日程
公募開始・公募要領公開 令和8年6月29日(月)
申請受付開始 令和8年9月30日(水) ※当初8月31日から延長
応募締切 令和8年10月30日(金)18:00厳守 ※当初9月30日から延長
採択発表 令和9年1月頃(予定)

申請受付・締切がすでに二度延長されています。
制度がまだ立ち上がったばかりで、運用が固まりきっていないことの表れだと見ています。
動くべきタイミングでは早めに動きつつ、要領の細部は今後も変わり得るという前提で見ておくのがよいと思います。

共通の必達要件

3枠共通で、補助事業終了後3〜5年の事業計画期間内に、以下をすべて満たす必要があります。未達の場合は補助金の一部または全部の返還義務が生じます。

  • 付加価値額の年平均成長率 +4.0%以上
  • 1人あたり給与支給総額の年平均成長率 +3.5%以上
  • 事業場内最低賃金が、地域別最低賃金より+30円以上高い水準

この3点セットは、他の補助金でも繰り返し目にする組み合わせです。省力化補助金でも、小規模事業者持続化補助金の賃上げ特例でも、形を変えて何度も登場しています。賃上げを補助金の「入口条件」に組み込む方針が、制度をまたいで定着してきていると感じます。

3つの枠、それぞれの中身

項目 革新的新製品・サービス枠 新事業進出枠 グローバル枠
対象 革新的な新製品・新サービスの開発 既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出 海外市場開拓に向けた国内輸出体制の強化
補助率 中小企業者 1/2(条件により2/3)
小規模・再生事業者 2/3
中小企業者 1/2(条件により2/3) 中小企業者 2/3
補助上限額 最大2,500万円
(賃上げ特例適用時 最大3,500万円)
最大7,000万円
(賃上げ特例適用時 最大9,000万円)
最大7,000万円
(賃上げ特例適用時 最大9,000万円)
必須経費 機械装置・システム構築費 機械装置・システム構築費 または 建物費のいずれか 機械装置・システム構築費 または 建物費のいずれか
補助事業実施期間 交付決定日から10か月以内
(採択発表日から12か月以内)
交付決定日から14か月以内
(採択発表日から16か月以内)
交付決定日から14か月以内
(採択発表日から16か月以内)

この実施期間の違いは見落とされがちですが、実務上はけっこう効いてきます。革新的新製品・サービス枠は10か月という短さで、機械装置の発注から納品・検収まで一通り終わらせる必要があるため、スケジュールの余裕は他の2枠より少ないと考えておいた方がよさそうです。

革新的新製品・サービス枠、皆さんおなじみだけどわかりにくい「革新性」という言葉について

この枠の要件を読んで、以前から見てきた議論との重なりを感じました。
公募要領には「顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発すること」とあり、単なる設備導入や既存業務の改善は対象外とされています。

この10年ほど、「革新性」という言葉の定義には何度か立ち会ってきました。
かつての「知的資産経営」的な、自社にとって新しければよいという緩やかな定義から、やがて「新規性・実現可能性・市場性・模倣困難性」という四要件に精緻化され、今回はまた、比較的素朴な定義に戻っているように見えます。
制度の名称や器は変わっても、その中身は時代ごとに詰め替えられてきた、というのが実感です。

もう一点、隣の新事業進出枠には「新市場・高付加価値事業の考え方」という専用の解説資料が用意されているのに対し、この革新的新製品・サービス枠には、そうした手引きが今のところありません。
公募要領の数行の記述が、判断の拠り所になります。

なお、先ほど触れた四要件は消えたわけではなく、加点項目の中に「経営革新計画の承認を取得している事業者」という形で残っています。本体の要件からは外れていますが、別の形で制度の中に残っているとも言えます。

この「革新性」をめぐる過去の変遷について、もう少し詳しくまとめた記事を別に用意しています。制度の背景をじっくり理解したい方は、あわせてご覧ください。

革新性とは?(note記事)

新事業進出枠の判断基準

この枠は、対象となる「新規性」「新たな市場」の考え方について、専用の参考資料が公開されている点が革新的新製品・サービス枠と対照的です。
ジャンル・分野の区分の仕方や高付加価値化の考え方が、具体的に言語化されています。
判断に迷ったときの拠り所がある分、準備は進めやすい枠だと思います。

グローバル枠というのは自発性が問われます

海外販路の開拓に向けた国内拠点強化を支援する枠ですが、要領上は「取引先主導の事業は自発的な取組とは言えず対象外」と明記されています。
すでに海外の取引先から要請されて動く、という形の投資は対象になりません。
自社発の輸出戦略として説明できるかどうかが、判断の分かれ目になりそうです。

審査項目(書面審査・9区分)

公募要領の審査項目は、実は9つの区分に分かれています。単純な「適格性」「技術面」「計画面」といった大枠だけでなく、かなり細かく作り込まれているので、順番に見ていきます。

(1)〜(3) 基本の3区分を見る
  1. 補助対象事業としての適格性:要件を満たすか、経費が事業目的に照らして真に必要かつ合理的な額か
  2. 経営戦略との整合性:過去の事業活動と一貫性があるか、外部環境・自社の強み弱みを踏まえた競争優位性があるか、現状の課題認識と解決策が高付加価値化・成長に結びついているか
  3. 事業の実現可能性:目標値の実現可能性、遂行体制(第三者への過度な依存がないか)、顧客ターゲットとニーズの裏付け、スケジュールと課題解決方法の妥当性、財務状況の十分性

ここで一点、審査上のポイントとして明記されているのが、「付加価値額要件・賃上げ要件において、基準値を上回る高い目標値を設定している場合、高さの度合いと実現可能性を考慮して審査する」という部分です。つまり、最低ラインぎりぎりの数字より、多少背伸びした(かつ根拠のある)目標値を掲げた方が評価は上がる設計になっています。

(4) 新事業進出枠限定:新市場性・高付加価値性を見る

この区分は新事業進出枠だけに適用され、しかも①か②かの選択制になっています。

  • ①普及度・認知度の低さで勝負するパターン:製品等が属するジャンル・分野自体の、社会における一般的な普及度や認知度が低いことを、客観的なデータ・統計で裏付ける
  • ②高付加価値化・高価格化で勝負するパターン:同じジャンル・分野の中で、一般的な付加価値や相場価格と比較して、高水準の高付加価値化・高価格化を図ることを示す

どちらを選ぶにせよ「客観的なデータ・統計」が要求されている点が実務上のハードルです。要領では地域経済分析システム(RESAS)の活用が案内されています。感覚論ではなく、数字の裏付けをどれだけ用意できるかで説得力が変わってきます。リーサス。

(5)〜(7) 公的補助の必要性・政策面・賃上げ計画の妥当性を見る
  • 公的補助の必要性:経済波及効果、費用対効果、先端技術・新ビジネスモデルの活用、そして「国の補助がなくとも自社単独で容易に実施できるものではないか」という、地味に厳しい問いも含まれます
  • 政策面:関税や中東情勢等の経済社会の変化への対応、地域への経済波及効果、産業クラスターとの整合性
  • 大規模な賃上げ計画の妥当性:賃上げ特例の適用を希望する場合のみ。一時的な賃上げでなく継続的に利益を人件費・設備投資に充当できているかが見られます
(8) 加点項目(全14種)を見る

加点項目はかなり数が多く、パートナーシップ構築宣言、くるみん、えるぼし、健康経営優良法人、再生事業者、経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定、J-Startup、新規輸出1万者支援プログラム(グローバル枠限定)、日本の食輸出1万者支援プログラム(グローバル枠限定)、研究開発費・試験研究費の計上、地域別最低賃金引上げ、事業場内最低賃金引上げ(全国目安63円以上)と、14種類あります。申請締切日時点で満たしている必要があるので、認定・宣言系の加点を狙う場合は逆算して準備しておく必要があります。

(9) 減点項目というここが実はマニアックポイントで重要です

加点項目より、こちらの減点項目の方が見落とされがちで、かつ実務上の影響が大きいと感じています。

  • ①加点項目要件未達事業者:ものづくり補助金・IT導入補助金・持続化補助金・事業再構築補助金・省力化投資補助金など、中小企業庁所管の主要な補助金で賃上げ加点を受けて採択されたのに、その加点要件を達成できなかった場合、未達が報告されてから18か月間、この補助金への申請で大幅減点されます。過去の別の補助金での賃上げ未達が、こちらに響いてくる設計です。
  • ②過剰投資の抑制:特定の期間に、類似のテーマ・設備等に関する申請が集中している場合、「一時的流行による過剰投資」とみなされ、別途審査の上で大幅減点される可能性があります。つまり、今話題の設備・技術に飛びつくような申請は、むしろ不利に働く場合があるということです。
  • ③他の補助事業の事業化が進展していない事業者:新事業進出補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金を過去に受給していて、直近の事業化状況報告での進捗段階が低い(3段階以下)場合、減点されます
  • ④補助金複数回利用者:過去3年間にものづくり補助金または新事業進出補助金で交付決定を1回でも受けている場合、減点対象です
  • ⑤補助要件未達事業者:ものづくり補助金・新事業進出補助金の第1回公募以降、交付決定を受けたのに賃上げ要件や事業場内最賃水準要件を達成できなかった場合、減点されます

特に②は、感覚的に「今これが流行っているから」という理由で設備投資を検討している場合、事前に一度立ち止まって考える価値があると思います。

口頭審査について

一定の審査基準を満たした事業者を対象に、オンライン(Zoom等)で実施されます。
所要時間は1事業者あたり15分程度です。対応できるのは、個人事業主本人、法人代表者、取締役(社外取締役を除く)、応募時の労働者名簿に記載されている担当者または経理担当者に限られており、事業計画作成支援者や経営コンサルタント、社外顧問等の同席は一切認められません。
省力化補助金の口頭審査(約30分)と比べると短めですが、対応できる人が限定されている分、代表者ご自身が計画の中身を語れる状態にしておくことが欠かせません。
経験上、口頭審査対象になるのは、比較的事業の閾値ベースになりますかね。
なんともいえないんでそのあたりはフワッとしておきます。

加点項目とのつながり

加点項目の中に「経営革新計画の承認を取得している事業者」が含まれています。これまで経営力向上計画・経営革新計画まわりのご相談を受けてきた事業者様にとっては、無関係な話ではありません。既存の計画が、この補助金の加点にそのままつながる可能性があります。

ご相談について

この制度はまだ第1回公募の最中で、こちらとしても手探りの部分があります。「うちの計画はどの枠に当てはまりそうか」「革新性の説明として筋が通っているか」といった、制度理解の入り口の部分からのご相談を想定しています。

  • まだ申請するかどうか決めていない状態でも構いません
  • 3枠のどれに該当するか、判断に迷っている状態でも構いません

一方で、採択の可否そのものを断定するご相談にはお答えできません。「うちの場合、どの枠が近そうか」というところから、お気軽にお問い合わせください。

 

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