2025年10月から、全国加重平均の最低賃金は 1,121円(引き上げ率6.3%) となります。
これは2025年9月5日(金)に、すべての都道府県の地方最低賃金審議会で取りまとめられたもので、過去にない高水準の引き上げです。
折からの物価高、燃料高、そして賃上げ。
中小企業にとっては、経営対応を喫緊に迫られる状況が続いています。政局は不安定な面もありますが、経産省(中小企業庁)は座視せず、最低賃金引上げに対応する中小企業・小規模事業者への 支援策 を公表しました。
今回はその公表された支援策についてまとめます。
経産省の該当ページへはこちらのリンクより⇒(https://www.meti.go.jp/press/2025/09/20250909001/20250909001.html)
支援策は3つの柱からなる
支援策は3つの柱からなります。
1. 賃上げ原資確保に向けた価格転嫁対策の強化
2. 賃上げ原資確保に向けた補助金等による支援
3. 中小・小規模企業の生産性向上における賃上げ支援機能の強化
です。 それぞれ公表された支援策資料を簡単にかみ砕いてまとめてゆきたいと思います。
1. 賃上げ原資確保に向けた価格転嫁対策の強化
最低賃金の引き上げや物価高に対応するには、仕入れや人件費などのコスト上昇を適正に価格へ反映できる環境が欠かせません。
そのため、国は「取引慣行の是正」に本腰を入れており、次のような施策を進めています。
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改正下請法(取適法)・振興法の執行強化
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サプライチェーン全体で価格転嫁を進める
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支払期間の短縮や手形払いの禁止を徹底
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令和8年(2026年)1月1日の改正法施行に向け、全国で周知を強化
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発注側企業への働きかけ
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協議に応じない一方的な価格設定など、不適正な取引慣行を是正
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評価の低い企業や地方公共団体には、大臣名で直接指導・助言を実施
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取引Gメンによる行政指導
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「注意喚起」や「協力要請」を通じて現場レベルで取引慣行を改善
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業界横断での取引適正化推進
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自主行動計画の策定や改正を促す
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「パートナーシップ構築宣言」の普及を後押し
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価格転嫁に関する課題についてはいまだに某大手の電気屋さんが消費者庁に挙げられているように、まだまだ下請けに対する旧い慣習や圧力が残っています。
その旗振りをもっと強化するという取り組みを上記では言っております。
パートナーシップ構築宣言について、補助金では加点項目としておなじみですが、もうすこし血を通わせるような感じが必要でしょうかね。
2. 賃上げ原資確保に向けた補助金等による支援
賃上げに取り組むためには、まず原資を確保することが必要です。そのために、中小企業・小規模事業者が活用できる補助金や税制措置が用意されています。
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小規模事業者持続化補助金
商工会・商工会議所の伴走支援を受けながら販路開拓などに取り組む制度。通常は上限50万円ですが、賃上げを実施する事業者は最大200万円まで拡充されます。補助率は2/3。 -
賃上げ促進税制
中小企業が賃上げに取り組む場合、法人税の控除が受けられる仕組み。特例として赤字企業であっても、繰越控除を活用することで将来的に恩恵を受けられるよう設計されています。 -
「100億企業」成長加速化支援
売上100億円規模を目指し、賃上げや輸出拡大、地域内での仕入れによって波及効果を生み出す中堅企業を重点的にサポート。地域経済をけん引する役割を期待されています。 -
事業承継・M&A・再生支援
経営者の高齢化や後継者不足に対応するための支援。事業承継の円滑化に加え、M&Aによる規模拡大や再生支援を通じて、地域の経営資源を有効に活用していく取り組みです。
この項目は、すでに走っている制度をさらに後押しし、周知を広げる意味合いも強い内容です。
小規模事業者や赤字企業に対しては「こうした制度を知っておいて活用してくださいね」という呼びかけ、成長力のある企業には「100億を目指せ」、さらに事業承継やM&Aも積極的に、といったメッセージが込められています。ある種の“淘汰”を意識させる部分もあり、その受け皿となる支援策についても新たに触れられています。
3. 中小・小規模企業の生産性向上における賃上げ支援機能の強化
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ものづくり補助金、IT導入補助金、省力化投資補助金(一般型)
これらの制度について、2024年度からの「最低賃金引上げ特例」が拡大されます。対象となるのは、指定された期間において3か月以上、改定後の地域別最低賃金を下回る水準で雇用している従業員が全体の30%以上を占める事業者です。 -
補助率アップと審査加点
該当する事業者には、補助率の引き上げに加え、採択審査での加点措置が設けられます。また、全国的な最低賃金の引上げ幅(63円)を上回る賃上げに踏み切った企業も、審査で評価が上乗せされます。 -
厚生労働省との連携強化
経済産業省と厚生労働省が共同でリーフレットを作成し、それぞれの拠点を通じて支援策を周知します。具体的には、労働局や働き方改革推進支援センター、労働基準監督署では中小企業庁の補助金を紹介し、よろず支援拠点では厚生労働省の業務改善助成金や働き方改革推進支援センターを案内する体制が整えられます。
ものづくり補助金や省力化補助金では、ここ数年「賃上げ」を合言葉のように掲げてきましたが、今回の改正でついに本当に賃上げを要件として組み込まざるを得なくなりました。正直、賃上げができなければ補助金を活用できないという構図になりつつあります。そこで国としても、利用が止まってしまわないように要件の緩和や加点措置を盛り込み、「設備投資と賃上げをどうにか両立させてほしい」というメッセージを込めています。現場の事業者から見れば、制度を使うために“賃上げの旗”を担がされている感は否めませんが、それでも補助金を活用するにはこの流れに乗らざるを得ないのが実情です。
斜に構えても仕方ないんですけどね。
とにかく、もの補助や省力化の要件緩和や加点項目についての話はちょっとした方針転換もみえるような制度になっています。

