事業再構築補助金 第13回が公募開始となりました。
今回の公募において、第12回からの大きな変更点はありませんが、細部の修正や加点項目の追加が行われています。申請を検討されている方は、公募要領を必ず確認し、最新の要件に対応できるようご準備ください。
その1基本事項と1:補助事業の具体的取組内容についてはコチラ
審査項目についての解説はコチラ
事業計画作成における注意事項について
事業計画書とは、補助金において審査項目を満たし、自社の現状や課題、そしてその解決のために補助事業で何をするかなどを記載して提出する書類のことです。
公募要領にはその事業計画書作成に係る注意点や、書き方が記載されています。
今回はその「事業計画作成における注意事項について」を見てゆこうと思います。
今回は2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)、3:本事業で取得する主な資産、4:収益計画について解説してゆきます。
2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
この項目で記載するのはデータです。市場データや、ユーザー動向そういった信頼できる客観的なデータを示したうえで、そのうえで優位性や収益性を書くという項目になります。
①市場規模と具体的ユーザー、優位性について
① 本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の優位性・収益性や課題やリスクとその解決方法などを記載してください。
〇内閣府において、知財が企業の価値創造メカニズムにおいて果たす役割を的確に評価して経営をデザインするためのツール(経営デザインシート)やその活用事例等を公表しています。事業計画の作成に際し、必要に応じてご活用ください。
・首相官邸HP「経営をデザインする(知財のビジネス価値評価)」
記載時のコツ
① 具体的なユーザー、マーケット、市場規模を明確に。
まず最初に問われるのは、「誰のために、どの市場で戦うのか?」です。
- 具体的なターゲットユーザー:
「〇〇業界の中小企業」や「20~30代の女性」といった漠然としたターゲットではなく、「都内のスタートアップ企業で、デジタル化に苦戦している経営者」「地方の工務店向けに〇〇を提供」といった 具体的なユーザー像 を提示することがポイントです。 - マーケットの特性:
「この市場は今後〇〇%の成長が見込まれ、2028年には△△億円規模に拡大」といった、信頼できるデータ(業界レポートや公的データ)を使いましょう。市場が成長傾向にあるのか、競争が激化しているのか、見極めることも重要。 - 市場規模の算出:
上記のデータを使い「ターゲット市場の全体規模は〇〇億円、当社が狙うセグメントはそのうち△△億円」など、具体的な数値を出して、どこまでのシェアを目指すのかを明示します。
② 成果の優位性・収益性を示す!
審査員が見たいのは、「この事業が競争に勝てる根拠」です。ここでは、以下のポイントに着目しましょう。
- なぜウチの商品・サービスが選ばれるのか?
- 独自の技術・サービスの強み(例:特許、特化したノウハウ)
- 他社にはないサービス提供(例:AIを活用した予測機能)
- 収益の妥当性・優位性
- 価格設定は競合に対して適切か?
- 利益率がどれくらい見込めるのか?
- 知財の活用
- 知財を活用する場合にここで是非、活用していただきたいのが「経営デザインシート」。知財をどのようにビジネスに組み込み、価値創造につなげるかを整理して活用しましょう。
③ 想定される課題とその解決策
「うまくいく!」と胸を張るのはいいですが、ビジネスにはリスクがつきもの。そのリスクを認識し、どう乗り越えるかが問われます。
- 市場競争の激化 → 競合他社との差別化戦略を構築
- 導入コストの問題 → 補助金や融資活用、コスト削減策の提示
- 人材不足 → 社内研修や外部パートナーとの提携
【審査項目との関連性】
以下の表に、審査項目との関連性をまとめました。
記載項目 | 概要 | 関連審査項目 | 具体的な記載ポイント |
---|---|---|---|
想定市場とユーザー | 対象とする市場規模とユーザーの明確化 | (2)新規事業の有望度① | 市場規模のデータを提示し、ターゲットを明確にする |
競争優位性 | 競合との比較における自社の強み | (2)新規事業の有望度③ | 他社との違い、差別化要素を強調 |
成果の収益性 | 事業の収益構造や利益計画 | (3)事業の実現可能性② | 利益率、損益分岐点、投資回収見込みを示す |
リスク対策 | 予想される課題と対処策 | (3)事業の実現可能性① | 市場環境や競争のリスクを特定し、解決策を提示 |
経営デザインシートの活用 | 知的財産戦略の活用 | (5)政策点② | どの知財がどのように価値を生むかを記載 |
②本事業の成果の事業化見込み
② 本事業の成果の事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等について記載してください。
何を記載すべきか?
- 目標時期の設定
事業開始から何年後に売上を確保できるのかを明記。- 例:「本事業の成果は2026年度中に市場投入し、初年度で1億円の売上を見込む。」
- 売上規模の具体化
将来的にどの程度の売上を目指すのか、成長シナリオを明確に。- 例:「2028年度までに売上高3億円を目標とし、市場シェア5%を確保する。」
- 量産化のスケジュールとコスト
量産体制の確立時期、製品の単価、製造コストなどを整理。- 例:「2027年から量産体制を整え、1台あたりのコストを30%削減し、競争力を強化。」
漠然とした希望的観測ではなく、裏付けのある予測を示すことが重要です。過去の類似事業の実績、試算データ、競合比較などを根拠として活用するとよいでしょうが、難しそうに見えるかもしれません・・、つまり、簡単に言うと、「なんとなく“いけそう”じゃダメ!ちゃんと数字や実績を使って“これならいける”と証明しよう」ということです。例えば、
- 過去の事例:「〇〇業界の類似製品では、3年で売上2倍になった。」
- 試算データ:「この設備投資で生産効率が30%向上し、原価を〇%削減できる。」
- 競合比較:「他社製品よりコスパが良く、提供スピードも速い。」
【審査項目との関連性】
項目 | 内容 | 関連審査項目 | 記載のポイント |
---|---|---|---|
事業化の見込み | 目標となる時期・売上規模・量産化時の価格について具体的に記載。 | (2)新規事業の有望度 ① | 定量的な目標設定と根拠を明確に。 |
売上規模の目標 | 市場規模や競合動向を踏まえた現実的な売上予測。 | (3)事業の実現可能性 ① | 過去のデータや市場動向を示して、説得力を持たせる。 |
量産化の価格設定 | 製品単価、コスト構造、市場競争力を考慮した価格設定。 | (3)事業の実現可能性 ② | 価格戦略と収益モデルをリンクさせる。 |
課題と解決策 | 予測されるリスクと、それに対する具体的な対応策を記載。 | (4)公的補助の必要性 ② | リスクの洗い出しとその解決策を明確に。 |
③ 図や写真、表を使って、具体的、かつ見やすく!
③ 必要に応じて図表や写真等を用い、具体的に記載してください。
コツ:
- A4サイズで見やすい解像度に(縮小しすぎると文字が潰れる)
- 内容に直結する図表を選択(関連性のないビジュアルは逆効果)
- 引用元・出典元を明記
3:本事業で取得する主な資産
本事業により取得する主な資産(単価50万円(税抜き)以上の建物、機械装置・システム等)の名称、分類、取得予定価格等を記載してください。(補助事業実施期間中に、別途、取得財産管理台帳を整備していただきます。)
なお、単価500万円(税抜き)以上の機械装置については、機械の種類が具体的に分かる名称を記載してください。
この項目では、補助金を使ってどんな建物や機械装置などを手に入れるのかを、具体的に示す必要があります。「ちゃんと計画通りに資産を取得し、事業の成長につなげる意思と根拠があるか」という点です。
記載すべきポイント
- 資産の名称と分類
- 単なる「機械」と書くのではなく、例えば「CNC旋盤機」「3Dプリンタ」「業務用冷凍設備」など、具体的に記載。
- 単価500万円以上の設備については、より詳細な機種名やメーカー情報まで盛り込むのが一般的です。
- 取得予定価格
- 具体的な見積もりや市場価格を参考に、実際に購入する可能性が高い金額を示す。
- 「概算」としても、根拠のある数字であることが大事。
- 補助事業期間中の管理計画
- 取得した資産の管理が求められます。例えば「取得財産管理台帳の整備」といった点も忘れずに。
4:収益計画
4:収益計画
① 本事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画等について具体的に記載してください。
② 収益計画(表)における「付加価値額」や「給与支給総額」(事業類型(A)(B)の場合)の算出については、算出根拠を記載してください。
③ 収益計画(表)で示された数値は、補助事業終了後も、毎年度の事業化状況等報告等において伸び率の達成状況の確認を行います。
収益計画の記載は、「この補助金、本当に投資する価値がある?」 という審査員の視点をクリアするために、かなり重要なポイントです。ただ「売上が伸びる予定です!」ではなく、実現可能なスケジュールや資金調達計画 を示し、しっかりした根拠に基づいた「数字」を提示することが求められます。
あとは、各申請枠で、「新規事業の売上構成比が10%以上になっていること」「過半となること」など要件があるので事業期間でしっかりと要件を満たす必要があります。
それと当然、給与の増額、そして賃金引上げ枠の場合はこの収益計画上でもしっかりと反映するようにしてください。
※付加価値額とは
付加価値額=営業利益+減価償却費+人件費
※人件費と、給与支給総額の違い
人件費は、給与賃金に法定福利費と福利厚生費が含まれている金額で、給与支給総額は基本給、手当類、賞与、役員手当は含み、福利厚生費、法定福利費、退職金は除きます。
※参考:個人事業主の給与支給総額
青色申告決算書で見てゆくと、「⑳給与賃金+㊳専従者給与+㊸青色申告特別控除前の所得額」基準年度などはこれで計算してゆくと良いでしょう。マイナスになってもマイナスのままで。
記載項目 | 概要 | 関連審査項目 | 記載のポイント |
---|---|---|---|
実施体制・スケジュール | 体制や計画の詳細、実施時期を明確化 | (3)事業の実現可能性① | 誰が何をいつ実行するのかを明示 |
資金調達計画 | 資金確保の手段と割合を具体的に | (3)事業の実現可能性② | 自己資金と融資のバランスを明確化 |
付加価値額・給与支給総額 | 収益増加の根拠と具体的な数値目標 | (9)大規模賃上げ及び従業員増加計画① | 市場分析や試算データの提示 |
継続的な成長計画 | 補助事業終了後の報告義務を考慮 | (2)新規事業の有望度① | 報告可能な実現性の高い数値設定 |
最後に再び、審査項目の関連性を載せておきます。簡易バージョンです
記載項目 | 概要 | 関連審査項目 | 記載のポイント |
---|---|---|---|
申請準備 | 申請マニュアルの確認、入力漏れ防止、ファイル名の適切な設定 | (1)補助対象事業としての適格性 ①② | 指示されたファイル名を厳守、必要項目を正確に入力 |
事業計画書の作成 | 1ページ目に新規性、2ページ目以降に事業内容の詳細を記載 | (2)新規事業の有望度 ①②③ | 事業の独自性、競合との差別化を明確にする |
補助事業の具体的取組内容 | 事業再構築の内容を明確化し、製品や顧客の違いを説明 | (3)事業の実現可能性 ① | 新市場進出や業態転換の明確なストーリーを示す |
将来の展望 | 市場規模や事業の収益性、課題と解決策を明示 | (2)新規事業の有望度 ① | 市場分析、競合分析、成長の根拠を明確に |
事業化見込み | 売上規模、価格設定、目標時期を詳細に計画 | (3)事業の実現可能性 ② | 達成可能な目標値を設定し、現実的なプランを提示 |
取得資産 | 50万円以上の資産、500万円以上の機械の詳細を記載 | (3)事業の実現可能性 ③ | 設備投資の妥当性、導入計画の具体性 |
収益計画 | スケジュール、資金調達、付加価値額の算出根拠 | (4)公的補助の必要性 ② | 売上目標の根拠、資金繰りの確実性 |
差別化と競争力 | 他社との差別化要素を具体的に説明 | (2)新規事業の有望度 ③ | 競合との差を明確にし、持続可能な競争優位性を示す |
再就職支援 | 従業員解雇時の配慮と再就職支援の方針 | (3)事業の実現可能性 ③ | 再雇用支援、スキルアップの計画を示す |
事業者連携 | 共同事業の役割分担とリスク管理 | (4)公的補助の必要性 ⑤ | 各事業者の役割を明確化し、連携の必要性を示す |