「省力化補助金」には2種類ある
省力化補助金は一般的に中小企業向けの「中小企業省力化投資補助金」と、中堅・中小企業の、例えば工場設立や設備の総とっかえ(生産設備、生産ラインなど)などの大規模投資を支援する「中堅・中小成長投資補助金」(通称:大規模投資補助金)があります。
中小企業省力化投資補助事業
ここでは中小企業省力化投資補助事業(通称「省力化補助金」、大規模じゃないほう)の公募要領を中心としたまとめを行います。
もくじ
- 概要
- 補助額
- 基本要件
- 補助対象経費
- 補助対象外経費
- 補助事業対象者
- その他の制約
- 留意事項
- 申請から事業を実施するまでの流れ
- 事業計画の策定
- 補助対象事業の要件
- 補助対象外の事業
- 補助事業の実施に当たっての遵守事項
- 不正行為は絶対にダメという話
- 審査の着眼点
- 提出書類一覧
中小企業省力化投資補助事業とは(概要)
「中小企業省力化投資補助事業」は、人手不足に悩む中小企業がIoTやロボットなどの技術を導入し、生産性を向上させるための取り組みを支援するための補助事業です。2023年度からの3年間を対象に、省力化に役立つ製品の導入経費の一部を補助し、中小企業の付加価値額や生産性の向上を促進します。補助対象となる製品は、あらかじめ登録されたリストから選ぶことができ、手続きが簡便で即効性があることが特徴です。この取り組みにより、最終的には中小企業の賃上げにもつなげることを目的としています。
長いので箇条書きでまとめるとこうなります。
- 目的: 人手不足に悩む中小企業がIoTやロボットなどの技術を導入し、生産性を向上させるための支援
- 対象期間: 2023年度から3年間
- 補助内容: 省力化に役立つ製品の導入経費の一部を補助
- 補助対象製品: あらかじめ登録された製品リストから選択可能
- 特徴: 手続きが簡便で、即効性がある
- 目的達成: 中小企業の付加価値額や生産性向上、最終的には賃上げを目指す
補助額
従業員数 | 補助率 | 補助上限額 (大幅な賃上げを行う場合) |
5人以下 | 1/2以下 | 200万円 (300万円) |
6~20人以下 | 1/2以下 | 500万円 (750万円) |
21人以上 | 1/2以下 | 1,000万円 (1,500万円) |
基本要件
1. 事業の概要
本事業では、中小企業が「カタログ」に登録された省力化製品を導入し、販売事業者と共同で事業を実施します。その目標は「労働生産性の向上」や「賃上げ」の達成です。補助金の交付が決定された場合でも、全額受け取れるとは限らず、事業の成果に基づいて補助金の額が確定されます。
2. 労働生産性向上の目標
- 労働生産性の定義
労働生産性=「付加価値額」 ÷ 「従業員数」
(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費) - 年平均成長率
交付申請時から事業終了後3年間で、労働生産性を年平均3.0%以上向上させる必要があります。
3. 賃上げの目標
- 最低賃金の引き上げ
事業期間終了時に、事業場内の最低賃金を45円以上引き上げる。 - 給与支給総額の増加
給与支給総額を6%以上増加させる。
この両方の目標を達成できる見込みの事業者は、補助上限額が増加します。ただし、申請時に賃上げ計画を従業員に表明しておく必要があります。
4. 補助金の減額・返還
- 賃上げ目標未達の場合
賃上げの目標が達成できない場合、補助金が減額され、目標を達成しなかったときの補助上限額に戻されます。また、効果報告の時点で賃金が下がっている場合には、補助金の返還を求められる場合があります。
5. 収益納付
- 収益納付の条件
効果報告後に得られた収益がある場合、補助金の額を上限としてその収益を納付しなければなりません。ただし、赤字の場合は免除されます。
※収益納付とは
補助金を受けて実施された事業によって得られた収益の一部または全額を、補助金の額を上限として国や補助金を交付した機関に返還することを指します。この制度は、補助金を受けた事業が予想以上に利益を上げた場合に、その利益を補助金の受領者が独占するのではなく、公共の利益として一部を納付する仕組みです。
具体的には、補助金で導入した設備や技術の成果により、事業が成功して収益が発生した場合、その収益額に応じて、受領した補助金の範囲内で納付義務が発生します。ただし、赤字や収益が発生しない場合には納付は免除されることが一般的です。
補助対象経費
項目 | 補助対象経費 | 補助対象外経費 |
---|---|---|
製品本体価格 | 機械装置、工具・器具、ソフトウェア等の購入費用(50万円以上) | リース品、中古品、交付決定前の購入、消費税など |
導入経費 | 設置作業、運搬費、動作確認、導入設定費用(製品本体価格の2割まで) | 交付決定前の費用、通常業務に関連する費用、移動交通費、消費税など |
補助対象外経費
項目番号 | 補助対象外経費 |
---|---|
① | 交付決定前や補助事業実施期間外に発生した費用 |
② | 過去に購入した製品や補助対象経費となっていない製品の作業費用 |
③ | 省力化製品の導入と無関係な設置作業や運搬費、データ作成費用等 |
④ | 試運転に伴う原材料費、光熱費等 |
⑤ | 通常業務に対する代行作業費用 |
⑥ | 移動交通費・宿泊費 |
⑦ | 委託・外注費 |
⑧ | 顧客が負担する導入費用(試作の原材料費等) |
⑨ | 交付申請時に金額が未確定なもの |
⑩ | 対外的に無償提供されているもの |
⑪ | 補助金申請、報告に関わる申請代行費 |
⑫ | 消費税 |
⑬ | その他、事業目的に適さないと判断されたもの |
補助対象事業者
業種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
その他の制約
- みなし同一法人: 親会社が議決権の50%以上を保有する子会社が複数存在する場合、親会社とその子会社は同一法人と見なされ、1社のみで申請が可能です。
- みなし大企業: 資本金や従業員数が基準を超える企業は大企業と見なされ、補助対象外となります。大企業が過半数の株式を保有している中小企業も、みなし大企業として扱われます。
留意事項
- 交付申請後に資本金や従業員数を意図的に変更して補助対象となる場合は、交付決定が取り消されることがあります。
- 事業を行うための法人設立や株主変更が不正な目的で行われた場合も、申請が無効とされることがあります。
申請から事業を実施するまでの流れ
- 事前準備(事業計画の策定)
- 公募要領を熟読し、省力化製品と販売事業者をカタログから選択。
- 中小企業と販売事業者が共同で事業計画を策定。
- 交付申請
- 中小企業と販売事業者が共同事業体として申請。
- 申請受付システムを通じ、直近1年間の事業年度と賃金のデータを基に申請。
- 採択通知および交付決定
- 中小機構が審査し、採択事業者を決定。
- 採択と同時に交付決定が行われ、通知が送られる。
- 補助事業期間
- 交付決定から原則12ヶ月以内に補助事業を実施。
- 実績報告をもって事業期間が終了。
- 補助額の確定および補助金の支払い
- 実績報告後、事務局が補助額を確定し、補助金が支払われる。
- 効果報告期間
- 補助事業終了後、毎年4月〜6月に効果報告を提出。
- 効果報告は5年間(合計5回)続け、3回目の報告で生産性向上の目標達成を評価。
- 期限内に報告がない場合、交付決定が取り消される可能性あり。
- 財産管理期間
- 補助事業で取得した資産は、法定耐用年数まで適切に管理する必要がある。
事業計画の策定
(1)カタログからの選択
- 本事業の補助を受けるには、導入する製品が カタログに登録された補助対象製品 である必要があります。また、その製品を購入する販売店もカタログに登録されていなければなりません。
- 本事業は 省力化 を目的としているため、新規事業のための製品導入は補助の対象外です。
- 補助金を申請する際、中小企業は 事務局のホームページで公開されているカタログ から製品を選び、販売事業者を決定した上で、これらの情報を申請時に提出する必要があります。
⇒製品カタログ(https://shoryokuka.smrj.go.jp/product_catalog/)
※製品のカタログ登録に関しては、「製品カテゴリ登録要領」「省力化製品・省力化製品製造事業者登録要領」を参照してください。
カタログってつまり簡単に言うと?
この「カタログ」は、補助金制度で導入できる認定済みの省力化製品の公式リストであり、企業はこのカタログから製品を選ぶことで、補助金の申請を行えるという仕組みです。
カタログ内の製品は信頼性が高く、導入することで企業の省力化に寄与することが期待されています。
(2)人手不足の状態にあることの確認
- 補助対象となるには、 人手不足の状態を示す 必要があります。以下のいずれかに該当する場合、省力化のための製品導入が求められます。ただし、選択肢④を選んだ場合、追加書類の提出や審査が厳格化されるため、結果通知が遅れることがあります。
- 平均残業時間が30時間を超えている:従業員が限られた人手で業務を遂行しており、直近の従業員の平均残業時間が30時間以上の場合。
- 従業員が前年度比で5%以上減少している:整理解雇ではない離職や退職によって、従業員が5%以上減少している場合。また、「常時使用する従業員」ではない場合は、総労働時間の減少をもって証明できます。
- 採用活動が不充足:求人を出しても、必要な人数を確保できていない場合。
- その他の要因:その他、省力化が必要とされる理由がある場合(ただし厳格な審査が行われます)。
(3)省力化を進めるための計画作成
- カタログから選んだ製品を活用し、 労働生産性の向上 を目指す事業計画を作成します。申請には以下の3点を説明する必要があります。
- 導入製品の使用方法:選んだ製品がどのように使用されるか。
- 期待される省力化効果:導入することで、どのような省力化が期待されるか。
- 時間・人員の使途:省力化によって浮いた時間や人員をどのように活用するか。
- また、賃上げ計画を行う場合は、中小企業が従業員にその旨を表明し、事業計画とともに申請します。
(4)保険への加入
- 補助額が 500万円以上 となる場合、事業計画期間が終了するまでの間、火災や自然災害(風水害を含む)による損失に備えるため、 保険または共済 への加入が義務付けられます。この保険の金額は、補助額以上でなければなりません。
- 保険料は補助対象外 であり、実績報告を提出する際には、加入証明書を提出する必要があります。
- なお、補助額が500万円未満の事業者にも、保険への加入が 強く推奨 されます。
補助対象事業の要件
要件番号 | 要件内容 |
---|---|
1 | 導入する省力化製品が補助事業者の業種と合致していること |
2 | カタログに登録された価格以内で事業計画を組み込むこと |
3 | 労働生産性の向上目標を設定し、取り組むこと |
4 | 賃上げ目標を設定し、従業員に表明すること(補助上限額の引き上げを行う場合) |
5 | 省力化製品を登録された業務プロセス以外に使用しないこと |
6 | 合理的に労働生産性向上の目標を達成できる事業計画を持つこと |
7 | 従業員の解雇を積極的に行わないこと |
8 | 補助額500万円以上の場合は保険への加入を行うこと |
補助対象外の事業
補助対象外の事業 |
---|
省力化製品を業種・業務プロセス以外の用途に使用する事業 |
不動産賃貸や駐車場経営など、労働を伴わない事業 |
特定の第三者に長期間賃貸する施設・設備を使った事業 |
1次産業(農業・林業・漁業)に取り組む事業 |
従業員の解雇を通じて労働生産性を向上させる事業 |
既存製品の置き換えで省力化効果が得られない事業 |
日本国外で実施する事業 |
公序良俗に反する事業 |
法令に違反する、または違反の恐れがある事業 |
暴力団との関係がある中小企業による事業 |
虚偽の内容を含む事業 |
補助事業の実施に当たっての遵守事項
(1)手続きについて
手続き | 説明 |
---|---|
情報の入力と書類提出 | 登録申請時に必要な情報を正確に入力し、必要書類を必ず提出すること。 |
情報の正確性 | 提出する情報やメールアドレスは正確に記載し、変更があった場合は速やかに手続きを行うこと。 |
交付申請の説明 | 中小企業と販売事業者は、公募要領や交付規程に記載された内容を十分に理解し、説明の上、交付申請を行うこと。 |
(2)情報提供等への同意・協力について
同意・協力事項 | 説明 |
---|---|
効果報告 | 補助事業終了後、5年間にわたって効果報告を行うこと。 |
調査協力 | 採否にかかわらず、事業に関する調査や政策効果調査への協力を行うこと。 |
提出情報の利用 | 事務局や国、中小機構が補助事業に関する情報を審査や事業管理のために利用することに同意すること。 |
法令遵守 | 法令に基づく場合、人の生命や財産の保護のために情報が利用されることに同意すること。 |
(3)不正対策について
不正対策 | 説明 |
---|---|
虚偽や不正の防止 | 申請や手続きに虚偽や不正があった場合、交付決定が取り消されることに同意すること。 |
立入調査への協力 | 必要に応じて行われる立入調査に協力しない場合、交付決定が取り消され、補助金返還が求められることに同意すること。 |
責任の所在 | 補助事業中に発生したトラブルは、事務局では対応せず、当事者同士で解決すること。 |
(4)事業の遂行について
事業遂行 | 説明 |
---|---|
申請の主体 | 中小企業自身が主体となって交付申請を行うこと。 |
契約と報告 | 補助事業期間中に、省力化製品の契約、納入、検収、支払、実績報告を完了させること。 |
省力化効果の報告 | 効果報告期間に、省力化製品の効果や雇用状況・賃金の状況を報告すること。正当な理由なく目標が達成できない場合、販売事業者登録が取り消される可能性がある。 |
不正行為は絶対にダメという話
不正行為は本事業において絶対に許されない行為であり、厳しく取り締まられます。虚偽の情報を提出したり、不正な手続きや行為が発覚した場合、補助金の交付決定が即座に取り消されるだけでなく、補助金の全額返還が求められることがあります。また、立入調査などが行われ、調査に協力しない場合も同様に交付取り消しや返還の措置が取られます。
さらに、不正行為が悪質であった場合には、事業者名や代表者名、不正行為の内容が公表されることがあり、信用を大きく失う結果となります。事務局は不正を絶対に許さず、補助事業を適切に遂行するための厳格な監視体制を整えています。
企業や販売事業者は、正直かつ誠実な対応を徹底し、不正が疑われるような行為や虚偽の申請を絶対に行わないようにしなければなりません。
審査の着眼点
補助事業への採択においては、基本要件を満たしているかどうかに加え、以下の要素も含めて総合的に判断されます。これにより、事業計画の実現可能性や将来性が評価されます。
(1)省力化の効果と高付加価値業務へのシフト
審査項目 | 説明 |
---|---|
合理的な省力化効果の説明 | 事業計画に記載された省力化の効果が、合理的に説明されているかどうかが重要です。導入する技術や製品が、具体的にどのように労働生産性を向上させるのかを示す必要があります。 |
労働生産性の向上の期待 | 省力化投資によって、労働生産性がどの程度向上するかを見極めます。特に、高い生産性向上が期待できる事業計画が評価されます。 |
新しい取組の実施や高付加価値業務へのシフト | 省力化により既存業務の効率化だけでなく、新たな取組を実施したり、より高付加価値のある業務へシフトする計画があるかどうかが評価されます。単なる工数削減だけでなく、事業全体の付加価値を増加させる取組が望まれます。 |
(2)賃上げへの積極的な取り組み
審査項目 | 説明 |
---|---|
大幅な賃上げの実施 | 大幅な賃上げに取り組む企業は、補助金の上限額が引き上げられます。審査において、企業が積極的に賃上げを行っているか、または将来的に賃上げを計画しているかが重要な評価ポイントです。 |
賃上げの効果 | 賃上げを実施することで、従業員の生活水準やモチベーションが向上し、それが労働生産性のさらなる向上につながるかどうかが考慮されます。 |
提出書類
補助金申請時に必要な主な書類は以下のとおりです。なお、場合によっては、事務局から追加で書類の提出が求められることがあります。
1. 全事業者共通
書類名 | 説明 |
---|---|
【指定様式】従業員名簿 | 中小企業判定用の従業員名簿 |
損益計算書 | 前期および前々期分の損益計算書 |
貸借対照表 | 前期および前々期分の貸借対照表 |
2. 法人の場合
書類名 | 説明 |
---|---|
履歴事項全部証明書 | 発行から3カ月以内のもの |
法人税の納税証明書(その2) | 直近3期分 |
【指定様式】役員名簿 | 指定された様式に基づく役員名簿 |
【指定様式】株主・出資者名簿 | 指定された様式に基づく株主・出資者名簿 |
3. 個人事業主の場合
書類名 | 説明 |
---|---|
確定申告書の控え(第一表) | 直近1期分 |
所得税の納税証明書(その2) | 直近1期分 |
4. 人手不足に関する書類
書類名 | 説明 |
---|---|
【指定様式】時間外労働時間 | 時間外労働時間に関する指定様式の書類 |
【指定様式】従業員減少の確認用 | 従業員減少に関する確認書類 |
求人サイトのキャプチャ | 申請日から1年以内の求人情報のキャプチャ(スクリーンショット) |
5. 賃上げに関する書類
書類名 | 説明 |
---|---|
賃金台帳 | 最低賃金者の賃金台帳を提出 |
6. 事業計画に関する書類
書類名 | 説明 |
---|---|
【指定様式】省力化効果判定シート | 省力化効果を判定するための書類 |
続報は随時追記予定
申請に関する注意点や申請ハードル、その他最新情報など随時追記してゆく予定です。