ただし検索エンジンの要約や、一部の自治体の案内ページには、令和7年度の税制改正前の情報がそのまま残っているケースも見受けられます。
制度は平成30年の創設以来、数回の改正を経て現在の形になっており、申請を検討する前に、まずその現在地を正確に押さえておきたいところです。
本稿では、中小企業庁が公表する最新の「先端設備等導入計画策定の手引き」(令和7年度税制改正後版)を一次資料として、制度の骨格・対象要件・申請実務のポイントを整理します。
先端設備等導入計画は単独の制度として存在するのではなく、経営力向上計画や中小企業経営強化税制、各種の設備投資型補助金と並んで、中小企業の設備投資を後押しする一連の施策群の一角を占めています。
これらの施策に共通するのが、近年の税制改正を通じて強まってきた「賃上げとの連動」という設計思想です。先端設備等導入計画における賃上げ表明の必須化も、この大きな流れの中に位置づけられる変化であり、単独の制度改正としてではなく、他の設備投資支援策(経営力向上計画のB類型における投資利益率要件、各種補助金における賃上げ要件など)とあわせて理解しておくと、制度全体の見通しがつきやすくなります。
制度の全体像
先端設備等導入計画は、中小企業等経営強化法に規定された、中小企業者が設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画です。
この計画は、設備の導入先となる市区町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けている場合に、当該市区町村から認定を受けることができます。
認定を受けた場合、税制支援(固定資産税の特例措置)と金融支援(信用保証の別枠追加)という2種類の支援措置を活用できます。
制度の建て付けとして最初に押さえておきたいのは、「計画の認定」と「固定資産税の軽減」が別物だという点です。
計画の認定自体は、賃上げ方針の表明がなくても受けられます。
実際、中小企業庁が公表した令和8年3月31日時点の集計では、令和7年度の新規認定5,901件のうち305件が賃上げ表明なしでした。
つまり全体の約5%は、賃上げにコミットせずに計画認定だけを取得していることになります。
ただし、固定資産税の軽減を受けるためには話が別になります。
現行(適用期間:令和7年4月1日〜令和9年3月31日)の制度では、賃上げ方針の表明そのものが軽減措置の必須条件になっています。
| 賃上げ方針の表明 | 固定資産税の軽減 |
|---|---|
| 表明なし | 特例措置の適用なし |
| 雇用者給与等支給額 +1.5%以上 | 3年間、課税標準を1/2に軽減 |
| 雇用者給与等支給額 +3.0%以上 | 5年間、課税標準を1/4に軽減 |
賃上げ表明なしで計画認定だけを取得している事業者(前述の305件)は、金融支援(信用保証の別枠)は活用できても、目玉である固定資産税の軽減は対象外ということになります。
制度の名称だけを見て「先端設備を入れれば自動的に固定資産税が安くなる」と理解していると、この2段階構造を見落としやすい部分です。
制度の沿革(参考)
固定資産税の軽減率は、政策目的のシフトに伴い段階的に変化してきました。
- 平成30年6月〜令和5年3月:根拠法は生産性向上特別措置法(令和3年に中小企業等経営強化法へ移管)。要件は工業会等から証明書を取得した、旧モデル比で生産性が1%以上向上する設備であること。減税措置は最大3年間、固定資産税がゼロ〜1/2(大半の市区町村がゼロを採用)。中小企業の古い設備の刷新を後押しするため、一定のカタログ要件を満たす設備を買えば無条件で固定資産税をゼロにするという、非常に強力な優遇措置でした。
- 令和5年4月〜令和7年3月:工業会証明書が廃止され、「年平均の投資利益率が5%以上」となることについて認定経営革新等支援機関の確認を受ける方式へ変更されました。この改正から「ゼロ特例」が終了し、ベースの減税率が1/2に縮小されました。同時に、従業員へ賃上げ方針(雇用者給与等支給額の+1.5%以上)を表明することで、減税期間や割合が有利になる仕組みが導入され、賃上げ表明なしは3年間1/2、1.5%以上の賃上げ表明ありは最長5年間1/3という構造になりました。
- 令和7年4月〜令和9年3月(現行):賃上げ方針の表明がなければ減税措置自体を受けられなくなりました。また、単なる1.5%の賃上げでは「3年間1/2」に留まるのに対し、より高い「3.0%以上」の賃上げを約束した企業には「5年間1/4」という優遇を用意し、企業により高いハードルへの挑戦を促す構造になっています。
工業会証明書は現行制度には存在せず、現在は認定経営革新等支援機関(商工会議所・商工会・中央会、地域金融機関、士業等の専門家)による確認のみで完結します。
対象となる中小企業者・設備
計画の認定を受けられる「中小企業者」の規模要件は、中小企業等経営強化法第2条第1項に基づき、業種によって以下のように区分されています。
| 業種分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|
| 製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
| ゴム製品製造業(政令指定業種・一部除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
| ソフトウエア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 |
個人事業主、会社(有限会社・士業法人を含む)のほか、企業組合・協業組合・事業協同組合・商工組合等の各種組合も、構成員の一定割合が中小企業者であれば認定対象になり得ます。
個人事業主の場合は開業届の提出、法人の場合は法人設立登記が完了していることが前提となります。
ただし、この「中小企業者」の規模要件と、固定資産税の特例を受けられる「中小事業者等」の規模要件(資本金または出資金1億円以下、あるいは従業員数1,000人以下等)は別建てになっています。
計画の認定は受けられても、規模要件の違いにより税制特例の対象外になる、というケースが生じ得るため、両者を混同しないようご注意ください。
対象設備は、機械装置(160万円以上)、工具(30万円以上)、器具備品(30万円以上)、建物附属設備(60万円以上、家屋と一体課税されるものを除く)です。
いずれも償却資産として課税されるものに限られます。
市区町村が策定する導入促進基本計画によって対象業種や対象設備が異なる場合があるため、実際の申請前には該当市区町村の基本計画を確認する必要があります。
また、対象設備は「労働生産性の向上に必要な生産、販売活動等の用に直接供される」ものに限られます。
事務用の器具備品や、生産・販売活動に直接使われない福利厚生施設に係る建物附属設備などは、この要件を満たしません。汎用性のある設備って言われるものです。
導入する設備が実際にどの事業活動に使われるのかを、計画書の「具体的な取組内容」欄と整合させて記載する必要があります。
労働生産性の向上要件についても補足しておきます。
計画認定を受けるためには、直接当該事業の用に供する設備の導入によって、労働生産性が基準年度(直近の事業年度末)比で年平均3%以上向上することが見込まれる必要があります。
これは計画期間全体を通じた目標であり、「計画期間内における労働生産性の向上率 ≧ 計画年数×3%」という形で判定されます。
3年計画であれば9%以上、5年計画であれば15%以上の向上を計画上見込む必要がある、という計算になります。
申請の実務フロー
大まかな流れは、①認定経営革新等支援機関への事前確認依頼、②市区町村への計画申請、③認定、④設備取得、⑤税務申告、という順序です。
ここで最も重要なのは、④設備取得は必ず③認定の後でなければならないという点です。
経営力向上計画のように、設備取得後に計画申請を行うことを認める特例は存在しません。
既に取得済みの設備を対象とする計画は認定されないため、スケジュール管理の失敗がそのまま特例の喪失に直結します。
認定経営革新等支援機関の事前確認や市区町村における認定事務にも一定の期間を要するため、設備の発注時期から逆算して余裕を持った準備が必要です。
具体的には、①認定経営革新等支援機関への確認依頼から確認書の発行までに一定の日数、②市区町村への計画申請から認定書の交付までにさらに一定の日数がかかります。
加えて、設備によっては発注から納品・据付までのリードタイムも考慮する必要があります。
これらを合算すると、設備投資の実行時期を決めてから逆算して、計画策定と支援機関への相談は数ヶ月単位の余裕を持って始めるのが望ましいといえます。
特に年度末にかけては、同様の相談が集中し、認定経営革新等支援機関側・市区町村側双方の処理に通常より時間を要することもあります。
新規申請の必要書類
税制措置(固定資産税の軽減)の対象となる設備を含む場合、一般的に以下の書類が必要になります。
- 認定申請書(様式第22号)
- 認定経営革新等支援機関による先端設備等導入計画の事前確認書
- 認定経営革新等支援機関が発行する投資計画に関する確認書
- 従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面(従業員代表者の署名または記名・押印が必要)
- その他、市区町村長が必要と認める書類
- 返信用封筒(A4の認定書を折らずに返送できるもの、切手貼付)※レタパが一般的でもあります。
賃上げ方針の表明は、従業員全員ではなく従業員の代表者のみに対して行うことも認められています。
ただし、口頭で伝えただけでは足りず、表明を受けた従業員代表者の署名(記名・押印も可)が入った書面を添付する必要があります。
この書面は、税制適用に関する重要書類として長期保存が推奨されています。
様式第22号の別紙(計画書)では、名称等・計画期間・現状認識・先端設備等導入の内容・資金調達方法に加えて、「雇用に関する事項」という欄があります。
ここには、雇用者給与等支給額を前事業年度比でどの程度増加させる方針かを、策定日・表明日・表明した従業員代表者名とあわせて記載します。
賃上げ方針を伴う計画を申請しない(固定資産税の特例措置を希望しない)場合は、この欄への記載は不要とされています。
ファイナンスリース取引で、リース会社が固定資産税を納付する場合は、上記に加えてリース契約見積書の写し、および公益社団法人リース事業協会が確認した固定資産税軽減計算書の写しが必要になります。
この場合、中小事業者側は設備を決定した段階で、賃上げ方針の内容(1.5%以上か3%以上か)をリース会社に伝えておく必要があります。
固定資産税を負担するリース会社が特例を利用し、その軽減分をリース料から減額することで中小事業者等に還元する仕組みになっています。
手引きと様式本体の記載に、細かな食い違いがある点について
中小企業庁が公表している「先端設備等導入計画策定の手引き」では、計画期間について「計画開始の月から起算して、3年(36ヶ月)・4年(48ヶ月)・5年(60ヶ月)のいずれかの期間を設定して記載」という3択の説明になっています。
一方、実際に使用する様式第22号そのものに付属する記載要領では「3年間以上5年間以内として定めること」という幅のある記載になっており、文言上は3年と5年の間の任意の期間を許容しているようにも読めます。
どちらの解釈が実務上採用されるかは、この2つの文書だけでは判別できません。
手引きという解説資料と、法的な様式本体の記載に細かな差異が生じることがある、という一例として留意しておきたいところです。
提出方法・様式は自治体ごとに異なる
提出方法(郵送・持参の別)や様式の細部、問い合わせ先は自治体ごとに差があります。
多くの自治体では、郵送または窓口持参による紙ベースの提出が基本になっており、認定書の返送のためA4サイズの封筒に切手を貼付して同封する形が一般的です。
また、令和5年度・令和7年度と短期間で税制改正が続いたため、旧様式のままの案内ページが残っている自治体や、税率の記載が最新の改正内容に更新されていない案内ページも見受けられます。
申請を検討する際は、自治体の案内ページの情報だけで判断せず、担当課に直接問い合わせて最新の要件・様式を確認するのが確実です。
変更申請
認定を受けた計画について、設備の追加取得など内容を変更しようとする場合は、その認定をした市区町村の変更認定を受ける必要があります。
ただし、設備の取得金額・資金調達額の若干の変更や、法人の代表者の交代など、計画の趣旨を変えない軽微な変更については、変更申請は不要とされています。
また、1.5%以上の賃上げ方針で認定を受けた後に3%以上の賃上げ方針へ変更したい場合など、変更申請時に賃上げ方針の内容を追記できるケースもありますが、変更前に取得済みの設備については、変更前の特例率が引き続き適用される点にご注意ください。
投資利益率5%以上の算出で押さえておきたい点
固定資産税の軽減を受けるには、認定経営革新等支援機関の確認を受けた投資計画において、年平均の投資利益率が5%以上見込まれることが要件になります。
算出式は以下のとおりです。
投資利益率 =(設備取得年度の翌年度以降3ヵ年度における営業利益と減価償却費の増加額の平均)÷ 設備投資額
この計算には、実務上つまずきやすい3つのポイントがあります。
- 対象外設備も計算には含める — ソフトウェアのように固定資産税の課税対象外である設備も、投資利益率の算出上は設備投資額に含めて計算します。税制の対象になるかどうかと、投資利益率の計算対象になるかどうかは別の話です。
- 決算値そのものではなく変化額を使う — 各項目は決算の絶対値ではなく、設備投資による増減額(変化額)の見込みを用います。売上高や営業利益の実額を単純に並べるのではなく、「この設備投資がなかった場合との差分」を見込む計算になります。
- 翌年度以降3ヵ年度の平均で見る — 設備投資が完了する年度(投資年度)そのものではなく、その翌年度以降3ヵ年度における営業利益・減価償却費の増加額の平均で投資効果を見込みます。導入直後の一時的な効果ではなく、中期的な収益改善を根拠にする建て付けになっています。
また、労働生産性の向上要件(計画の認定そのものに必須。年平均3%以上の向上が見込まれること)についても、認定経営革新等支援機関の確認が必要です。
労働生産性は「(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量(労働者数、または労働者数×1人当たり年間就業時間)」で算定します。
投資利益率の要件は税制措置(固定資産税の軽減)を受ける場合にのみ追加で必要になるのに対し、労働生産性の向上要件は計画認定そのものの前提条件である、という位置づけの違いも押さえておきたいところです。
加えて、この投資利益率を裏付ける「基準への適合状況」の様式は、経営力向上計画(収益力強化設備・B類型)の同種様式と比べても、要求される粒度が細かくなっています。
売上高・売上原価・販管費それぞれの変化額について、「原材料費への影響」「賃上げに伴う労務費の増加」「光熱費の改善」「修繕費の改善」といった費目別の内訳と、その根拠となる添付資料への参照を求める構成になっています。
実際にどう記載するかは各社の投資内容・業種・設備の性質によって大きく異なるため、一般化して示せるものではありません。
他の税制優遇制度との併用
先端設備等導入計画による固定資産税の軽減と、経営力向上計画による中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除10%、資本金3,000万円超の法人は7%)は、同じ設備投資に対して併用が可能です。
前者は地方税法に基づく固定資産税の軽減、後者は租税特別措置法に基づく法人税・所得税の優遇であり、適用される税目そのものが異なるためです。
省力化補助金 一般型など大型補助金の採択後に、両計画を併用して補助金・固定資産税軽減・法人税軽減を同時に活用するケースは実務上珍しくありません。
両制度とも認定経営革新等支援機関の確認が必要で、投資利益率5%以上という要件も共通しているため、決算書や見積書、投資効果の積算根拠といった事業者側の準備資料はかなり重複します。
ただし申請先は異なり(先端設備等導入計画は市区町村、経営力向上計画は事業分野別の主務大臣・地方経済産業局)、確認書自体もそれぞれ別に作成する必要がある点はご留意ください。
さらに、大型の設備投資型補助金を並行して活用する場合、この2つの計画に加えて補助金の交付申請・実績報告のスケジュールも絡んできます。
それぞれの制度で要求される投資効果の算出方法(投資利益率、付加価値額の伸び率など)が微妙に異なるため、一つの設備投資について複数の書類を並行して作成することになります。
どの制度から先に申請を進めるか、確認書の取得順序をどう組むかは、設備の発注時期や補助金の交付決定時期との兼ね合いで変わるため、早い段階で全体のスケジュールを整理しておくと手戻りが少なくなります。
認定経営革新等支援機関について
先端設備等導入計画の認定を受けるには、事前に認定経営革新等支援機関による確認を受ける必要があります。認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関する専門知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した個人・法人・中小企業支援機関等を指し、商工会議所・商工会・中央会、地域金融機関、そして税理士・公認会計士・弁護士・中小企業診断士・行政書士等の士業が含まれます。
認定経営革新等支援機関を探す場合は、中小企業庁が公開している検索システムを利用できます。
確認の内容は、先端設備等導入計画そのものについて(労働生産性が年平均3%以上向上する見込みか)と、税制措置を受ける場合の投資計画について(投資利益率が年平均5%以上見込まれるか)の2段階になっています。
前者は計画認定を受けるために必須、後者は固定資産税の特例を受ける場合に追加で必須という位置づけの違いは、既に述べたとおりです。
認定経営革新等支援機関が発行する確認書には、押印は不要とされていますが、税制適用に関する重要書類であることから、確認書のPDFデータを送受信したメール等の長期保存が推奨されています。
金融支援
先端設備等導入計画の認定を受けた事業者は、民間金融機関からの融資に際し、信用保証協会による普通保険等の通常枠とは別枠での追加保証を受けられます。
| 保険の種類 | 通常枠 | 別枠 |
|---|---|---|
| 普通保険 | 2億円(組合4億円) | 2億円(組合4億円) |
| 無担保保険 | 8,000万円 | 8,000万円 |
| 特別小口保険 | 2,000万円 | 2,000万円 |
金融支援の活用を検討する場合は、計画申請の前に信用保証協会等の関係機関へ相談する必要があります。
なお、金融機関及び信用保証協会の融資・保証の審査は、市区町村による計画の認定審査とは別に行われるため、認定を取得しても希望通りの融資・保証を受けられるとは限りません。
制度上のメリットの整理
現行制度における主なメリットは、固定資産税の軽減と、信用保証の別枠という2点に整理できます。かつては一部のものづくり補助金の公募回において、先端設備等導入計画の認定(固定資産税ゼロの特例を措置する市区町村に限定)が加点項目とされていた時期もありました。だいぶ昔ですね・・。
しかし現行の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(旧ものづくり補助金の後継となる統合補助金)の加点項目一覧を確認する限り、先端設備等導入計画は含まれていません。
補助金審査における副次的なメリットは、少なくとも現行の主要な統合補助金の制度上はなくなっています。
制度創設当初は、固定資産税がゼロになるという強力な優遇措置に加え、補助金審査での加点という副次的なメリットも重なっていたことが、この制度の知名度を押し上げた面があります。
現行制度では、優遇の中身自体は固定資産税の軽減(最大1/4)と信用保証の別枠に絞られており、賃上げ方針の表明という追加の負担も生じます。
制度への期待値は、こうした変遷を踏まえたうえで持つ必要があります。
認定後の税務申告
認定を受けた先端設備等導入計画に基づき取得した設備について、税制上の優遇措置の適用を受けるには、設備が所在する市区町村への税務申告が別途必要になります。
固定資産税(償却資産)の賦課期日は毎年1月1日であり、申告期限は原則として毎年1月31日です(申告期限が休日等に当たる場合は翌開庁日にずれることがあります)。税務申告に際しては、納税書類に投資計画に関する確認書の写し、認定を受けた計画の写し、認定書の写しを添付する必要があります。
ここで見落とされやすいのが、計画の認定を受けたことと、税制上の優遇措置の適用要件を満たすことは、別の話だという点です。
設備取得後に税務申告を行う段階になって、取得価額や中古資産でないことなどの税務上の要件を満たさないことが判明した場合、計画自体は有効でも、その設備については特例の適用を受けられません。
認定を受けたからといって税務上の要件確認を省略してよいわけではなく、設備の発注前・取得前の段階で、対象設備の要件(最低取得価額、中古資産でないこと等)を確認しておく必要があります。
計画書の記載内容について
様式第22号の別紙(計画書)には、名称等、計画期間、現状認識、先端設備等導入の内容、資金調達方法、雇用に関する事項という項目が並びます。このうち「現状認識」の欄では、自社の事業概要に加えて、売上高増加率・営業利益率・労働生産性・自己資本比率といった財務指標を参考に、自社の改善すべき項目を分析して記載することが求められています。単に「業績は堅調である」といった定性的な記載に留まらず、指標の推移から課題を導き出す構成が想定されています。
「先端設備等導入の内容」の欄では、具体的な取組内容(導入する設備とその活用方法)と、その取組を通じた将来の経営状況の展望を記載します。
労働生産性向上の目標は、現状(原則として計画開始直前の決算実績)と計画終了時の目標を基に、伸び率((計画終了時の目標-現状)÷現状)の形で示します。決算一期を経ていない事業者の場合は、合理的な算出方法で現状値を求めることになります。
まとめ
先端設備等導入計画は、平成30年の「固定資産税ゼロ」の時代から、令和7年度改正の「賃上げ表明が必須」という現在の形まで、政策目的のシフトに合わせて段階的に姿を変えてきた制度です。
制度の骨格自体はシンプルですが、認定と税制優遇の要件が別建てになっている点、設備取得のタイミングが厳格に定められている点、投資利益率の算出に一定の技術を要する点など、実務上は細部の理解が優遇の可否を左右します。
また、計画認定を受けられる「中小企業者」の規模要件と、固定資産税の特例を受けられる「中小事業者等」の規模要件が別建てになっている点、手引きの説明と様式本体の記載要領との間に細かな差異が見られる点、自治体の案内ページが税制改正のペースに追いついていないことがある点など、公表資料を突き合わせて初めて見えてくる論点も複数存在します。
申請を検討する際は、中小企業庁が公表する最新の「先端設備等導入計画策定の手引き」を一次資料として確認し、あわせて認定経営革新等支援機関に事前相談することをお勧めします。

