はじめに
小規模事業者持続化補助金は、「採択=交付確定」ではありません。
採択後にも「交付申請」「事業実施」「実績報告」という複数のステップが存在し、その途中で事情により辞退・中止・廃止などの判断が必要になる場合があります。
本記事では、<創業型>および<一般型 通常枠>の「補助事業の手引き」に基づき、採択辞退・中止・廃止・事故報告に関する基本的な考え方と手続きを整理します。
補助事業の手引きは下記のリンクよりダウンロードください。
(一般型)
商工会 ⇒(https://www.jizokukanb.com/jizokuka_r6h/info.htm)
商工会議所 ⇒(https://r6.jizokukahojokin.info/)
(創業枠)
商工会地区・商工会議所地区共通<https://r6.jizokukahojokin.info/sogyo/>
制度変更のポイント(第17回公募以降)
第17回公募以降、持続化補助金の運用ルールが大きく変わりました。
これまで「採択=交付決定」とほぼ同義でしたが、現在は「採択=交付候補者の決定」にとどまり、
採択後に改めて交付申請を行い、審査を経て交付決定が通知される仕組みとなっています。
採択辞退の手続き(交付決定前)
小規模事業者持続化補助金では、採択通知=交付決定ではありません。
採択通知を受けた後、正式な交付決定通知書が発行される前に、事業を辞退することが可能です。
これを「採択辞退」といいます。
辞退が必要となる主なケース
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他の補助金(例:省力化補助金や自治体補助金)に採択されたため、重複補助を避ける必要がある場合
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経営状況や資金計画の変更により、補助事業の実施が難しくなった場合
この段階での辞退は、必ず早めに事務局へ連絡し、正式な意思表示を行うことが必要です。
手続きの流れ
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補助金事務局への連絡
まず、採択された地域を管轄する補助金事務局に電話またはメールで連絡します。
申請番号(例:R6J12345)と事業名を伝え、「採択辞退を希望する」旨を申し出ます。 -
事務局からの指示に従う
事務局から、辞退理由の確認や書面提出の要否について案内があります。
手引き上では明確な様式の定めはありませんが、メールでの正式回答や簡易様式の提出を求められる場合があります。 -
辞退完了の確認
事務局での処理完了後、Jグランツ上のステータスが「辞退」または「取下」と表示される場合があります。
処理が反映されるまで数日かかることもあるため、メールでの受理確認を推奨します。
現場での注意点
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辞退の連絡を遅らせないこと。
交付申請準備が進んでいる段階で辞退を申し出ると、手続きが複雑化します。
「辞退の可能性がある」と感じた時点で事務局に相談するのが最善です。 -
事務局の対応はケースバイケース。
採択辞退専用のフォームや様式が設けられていないため、
各回の公募要領・手引きで異なる対応がなされる場合があります。
交付申請の取り下げ(交付決定後)の手続き
採択後に交付決定通知を受けたものの、
交付内容や付された条件に納得できない場合などで、「交付申請の取り下げ」を行うことができます。
結構、上記のケースは起こりがちで、公募要領の経費について誤解があったり、それによってなかなか折り合いがつかない場合なんかがあります。
この手続きは、採択辞退(交付決定前)とは異なり、すでに交付決定通知が発行された後に、事業実施を見送る際の正式な対応です。
手続きの流れ
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交付決定通知の確認
交付決定通知書には、補助金額や条件、実施期間などが記載されています。
内容に不明点や不服がある場合は、まず事務局に相談しましょう。 -
取下げの意思表示
事業を実施しないと判断した場合は、交付決定通知を受けた日から10日以内に、 「交付申請取下届出書」(交付規程・様式第3)を提出します。
提出期限を過ぎると正式な取下げとして扱われない場合があるため、注意が必要です。 -
事務局の承認・確認
提出後、事務局により取下げ理由や内容が確認され、受理されると正式に交付決定が無効となります。
必要に応じて、メール等で「取下げ確認」の通知が届く場合があります。
提出書類:交付申請取下届出書(様式第3)
交付決定後に補助金の交付申請を取り下げる場合は、「交付申請取下届出書(様式第3)」を提出します。
この書類は、交付決定通知を受けた日から10日以内に事務局へ提出する必要があります。

交付申請取下届出書(様式第3)/出典:小規模事業者持続化補助金「補助事業の手引き」
記載ポイント
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補助事業の名称
申請時に登録した正式名称をそのまま記載します(略称不可)。 -
取下げ理由
たとえば「他補助金採択により重複経費が生じたため」や 「資金計画変更により実施困難となったため」など、簡潔かつ具体的に記載します。
補助事業の中止・廃止の手続き
小規模事業者持続化補助金における補助事業の中止・廃止は、補助事業の実施中に計画内容に変更が生じた場合などに必要となる手続きとして定められています。
手続きや様式、注意点は以下の通りです。
中止(廃止)の申請が必要な場合
補助事業を実施する中で、やむを得ず補助事業の中止または廃止が生じる場合には、あらかじめ変更内容を申請し、事務局の承認を受ける必要があります。
廃止の手続きと様式
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諸事情により補助事業の全部を廃止せざるを得ない場合は、
補助事業実施期限までに、 「補助事業の中止(廃止)申請書」(交付規程・様式第5)を提出します。(様式など電子システムにおいて入力) -
補助金事務局は、廃止の理由および内容等の妥当性を考慮し、 承認を行った上で「中止(廃止)承認通知書」を通知します。
廃止承認後の補助金交付
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事業廃止の承認を受けた場合、補助金の交付は行われません。(全額交付しないということ。部分実施や途中経費の精算は認められません)
関係書類の保存義務
補助事業を廃止した場合でも、関係書類の保存義務があります。
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補助事業に関係する帳簿および証拠書類は、
補助事業の終了日(廃止の承認を受けた場合も含む)から5年間保存する必要があります。 -
この期間中に、会計検査院等による実地検査が行われる可能性があり、補助金を受けた者として、これに応じる義務があります。
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検査の結果、補助金の返還命令等の指示がなされた場合は、これに従う必要があります。
提出書類と概要(まとめ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 補助事業実施期限まで |
| 提出書類 | 補助事業の中止(廃止)申請書(交付規程・様式第5) |
| 承認手続き | 事務局が内容の妥当性を審査し、「中止(廃止)承認通知書」を通知 |
| 補助金交付 | 廃止承認後の補助金交付は行われない |
| 保存義務 | 終了日から5年間、帳簿・証拠書類を保存 |
事故報告(不可抗力による遅延)
小規模事業者持続化補助金では、事業者の責任によらない事由により、補助事業の実施期限までに事業を完了できないと見込まれる場合は、事故報告が必要とされています。
事故報告が必要となるケース
以下のような、不可抗力による事業の遅延・中断が対象となります。ほぼ、天災に限定ですネ。
- 異常気象による激甚災害地域の指定
- 火事
- 地震
これらの事由により、補助事業の遂行や完了が困難となった場合は、速やかに事故報告を行う必要があります。
手続きの概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出時期 | その状況となった時点で速やかに提出します。 |
| 提出書類 | 事故報告書(交付規程・様式第6)を提出します。 |
| 提出方法 | 電子申請。 |
事業実施期限の延長について
事故報告は、次の点に注意が必要です。
- 「取引先の都合」や「自社の都合」は対象外とされています。
- 申請時点で既に周知されている社会的要因(例:ウクライナ情勢、新型コロナウイルスの影響、半導体の供給不足等)を理由とした場合は、事業実施期限の延長は認められません。
- 延長が認められる場合でも、延長期間は原則として最大1か月とされています。
なお、事故報告や延長の取扱いは、公募回や枠(創業型・一般型など)によって細部が異なる場合があります。最新の交付規程および手引きを必ず確認のうえ、速やかに事務局へ相談してください。
ひとことでいうと、初動が第一、判断と相談は早急に
補助金の「辞退」「中止」「廃止」「事故報告」は、
どの制度であっても最終的には「誰に・いつ・どう伝えるか」に尽きます。
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まずは商工会または商工会議所に相談する。
担当者が制度の窓口であり、最新の提出方法や様式を確認できます。 -
次に補助金事務局へ正式に連絡する。
メール・電話のいずれでも構いません。必ず「申請番号」を添えて、状況を説明しましょう。 -
自己判断での事後報告は避ける。
「とりあえずやめておこう」は最も危険です。必ず承認を得るまで実施停止にしないよう注意してください。 -
書類やメール履歴はすべて保管する。
特に辞退・中止・事故報告関連は、会計検査や補助金返還の判断材料となります。 -
それでも迷うときは、再び相談。
商工会・商工会議所・事務局は“敵”ではありません。早めの相談が最善の防御策です。

