事業承継・M&A補助金も13次公募がはじまりましたね。
今年は11次公募からやっているわけですが、「知る人ぞ知る」的な補助金ではもったいないので、あたらめてこの補助金についてまとめてゆきたいと思います。
なお、本稿は私のまとめをchat GPTによって読みやすい文体に整えています。
内容に関しては、AIによる検索や照会を用いておりません。
特徴的なのが、本稿で紹介する「PMI推進枠」です。
事業承継・M&A補助金(PMI推進枠)13次公募のホームページは下記より↓
https://shoukei-mahojokin.go.jp/r6h/13-pmi_download/
なお、本文中の説明はあくまで概要把握を目的としたものであり、
実際の申請にあたっては最新の公募要領・交付要綱・FAQ等をご確認ください。
また、加点・減点や経費区分等の運用は公募回により変更される場合があります。
本記事は私個人の見解を交えず、
できるだけ中立的に「制度として何が定められているか」を示すことを意図しています。
そのため、実務上の運用や審査傾向などの分析については別途記事にて扱う予定です。
1. 制度の概要
事業承継・M&A補助金「PMI推進枠」は、M&A後の経営統合(Post Merger Integration=PMI)を円滑に進めるため、専門家の支援に要する費用を補助する制度です。
M&Aの“成立そのもの”を支援する「専門家活用枠」とは異なり、成立後の統合プロセスに焦点を当てた制度です。
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補助率:1/2以内
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補助上限額:150万円(単独申請・同時申請とも)
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対象経費:専門家への委託費、謝金、旅費 など
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対象期間:M&A成立後からおおむね1年間(=狭義のPMI期間)
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目的:統合によるシナジー創出、ディスシナジー解消、生産性向上、地域経済への波及
なぜ「PMI推進枠」が設けられたのか
この枠を語る上で、この枠はどうして設けられたのかを語らなくちゃいけないでしょうね。
補助金の背景がわかれば理解も広まるといった感じで。
1. M&A後の“統合失敗”が現場で課題になっていた
中小企業のM&A件数は年々増加していますが、成約後の統合(PMI)でつまずく事例が多く報告されていました。
買収が成立しても、次のような課題で経営が混乱するケースが後を絶ちません。
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経営理念・文化の違いによる従業員の離職
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会計・人事制度の統一が進まず、コスト管理が二重化
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IT・販売管理システムが統合できず、現場の混乱が長期化
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シナジーを想定した事業連携が実現しない
「M&Aは成功したのに、その後のPMIで失敗した」と評される典型例であり、結果として地域の雇用や経済にマイナスの影響を及ぼしていました。
2. 「成約支援だけでは不十分」という政策判断
従来の「事業承継・引継ぎ補助金」や「専門家活用枠」では、M&Aの成立(クロージング)までの支援が中心でした。
しかし中小企業庁の分析では、成約後に適切な統合プロセスを経なければ、
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生産性向上が実現しない
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買い手・売り手双方のメリットが消える
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経営者交代後の離職・業績悪化が起こる
といった「統合リスク」が指摘されていました。
このため、“M&A後”の初期統合(狭義のPMI)にフォーカスした専用枠として「PMI推進枠(PMI専門家活用類型)」が新設されました。
3. 制度設計の意図 ―「統合を成功させる仕組みづくり」
PMI推進枠の設計には、次の3つの意図があります。
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統合フェーズに専門知見を投入すること
弁護士・会計士・診断士・金融機関・コンサルタントなど、
PMI経験のある専門家をチームに組み込み、初期統合の設計・実行を支援する仕組みを制度化。 -
補助対象を“狭義のPMI”に絞り、効果を集中させること
補助対象を「クロージング後1年以内の統合期」に限定し、
“経営体制を整える=シナジーを顕在化させる”段階に資金を集中させています。 -
地域経済の安定化・雇用維持を図ること
M&Aが地域の企業ネットワークを分断せず、
承継・統合を通じて地元の雇用と生産を守ることを狙いとしています。
2. PMI推進枠の対象範囲
PMI(Post Merger Integration)は、M&A後の統合プロセス全体を指しますが、本制度で支援されるのは「狭義のPMI(成立後1年程度)」に限定されます。
狭義のPMIと申しまして、プレPMIからポストPMIといった全般(広義のPMI)よりも範囲が狭くなっています。
区分 | 内容 | 補助対象 |
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プレPMI | M&A成立前の準備(DD・交渉等) | ✕(専門家活用枠で対象) |
狭義のPMI | M&A成立後1年以内の初期統合(計画~実行) | ◎(本枠の中心) |
ポストPMI | 統合後の継続的な改善・運用 | ✕ |
3. 対象となる取組(例)
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PMI計画の策定(統合方針・PMO体制・ロードマップ作成)
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経営統合支援(方針・権限体系・事業計画の統一)
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事業統合支援(重複コスト削減、販路・仕入れ統合、シナジー創出)
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管理機能整備(人事・給与制度統合、会計方針統一、IT・システム統合)
※成果物として、「統合方針書」「議事録・資料」「最終レポート(専門家報告)」が求められます。
4. 補助対象外となる取組
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成立前のM&A仲介・FA・デューデリジェンス(DD)費用(専門家活用枠で対象)
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PMI期間を超える恒常的な経営コンサルティング
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成果物が不明確な活動(挨拶、関係構築のみのミーティング等)
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交付決定前の契約・発注・支払い
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現金払いやQR決済など、所定方法以外の支払い
5. 申請類型
PMI推進枠は、「単独申請」と「同時申請」の2類型があります。
類型 | 概要 | 要件 |
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単独申請 | M&Aが成立済みで、補助期間内にPMIを実施 | 最終契約締結済・クロージング完了済 |
同時申請 | M&A成約支援(専門家活用枠)と併願 | 補助期間内にクロージング完了が必須(未達は不交付) |
6. 申請時に必要な主な書類
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履歴事項全部証明書(法人)
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直近3期分の決算書
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M&A最終契約書(単独申請の場合)
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デューデリジェンス実施証跡(契約書・報告書)
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専門家との委託契約書案または見積書
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PMI計画(統合スケジュール、支援内容、専門家の役割)
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加点書類(該当する場合)
7. 審査の着眼点
審査は、事務局および外部有識者で構成される審査委員会によって書面審査方式で行われます。
主な評価観点は以下の通りです。
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PMIの目的・必要性:統合の意義と狙う効果が明確か
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集中実施計画の妥当性:Day0から1年の取組スケジュールの合理性
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シナジー効果と地域波及性:統合による経済効果・地域への貢献
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成長見込み:統合後の事業拡大や収益性の見通し
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財務健全性:申請者の経営状況・継続性
8. 加点・減点項目
加点される取組(任意提出)
区分 | 提出書類の例 |
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会計要領/指針の適用 | チェックリスト(会計専門家印) |
各種計画の認定 | 経営力向上計画、経営革新計画、先端設備導入計画等の認定書 |
賃上げ要件 | 賃金引上げ誓約書、賃金台帳写し |
小規模企業者 | 直近期の決算書・従業員数記載 |
健康経営・えるぼし等 | 認定証の写し |
サイバーセキュリティお助け隊 | 利用証明書・請求書 等 |
減点対象
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過去18か月以内に中小企業庁所管補助金で賃上げ加点を申請し、未達であった場合(正当理由がない場合)。
9. 実績報告と成果物
事業完了後30日以内(または完了期限後10日以内)に実績報告を提出します。
提出書類は以下が基本です。
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成果物(統合方針書、議事録、最終レポート)
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契約~支払いの証憑(見積・契約・検収・支払)
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専門家完了報告書
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経理帳簿(会計要領準拠)
また、事業完了後3年間の事業化状況報告が義務付けられています。
10. よくある誤解・注意点
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「契約日を補助期間に合わせるだけ」は無効(覚書等で日付調整しても対象外)
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外注費・委託費は50万円未満でも相見積が必要
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現金払いや分割払は不可(振込またはクレジット1回払いのみ)
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専門家活用枠との同時申請時は、経費の重複計上禁止