補助金の経費について「消費税」は多くの場合、対象外経費になります。
なぜ、対象外なのか
1. 消費税還付制度との重複を避けるため
課税事業者(免税事業者や簡易課税事業者を除く)は、事業に関連する仕入れにかかる消費税を、最終的に国から還付または控除されることができます。これは、仕入れにかかる消費税を納税額から差し引く制度(仕入控除制度)によるものです。
- 消費税を還付される事業者が、もし補助金でも消費税相当額を受け取った場合、同じ消費税額について二重で利益を得ることになります(補助金と還付の重複)。これを防ぐため、消費税相当額を補助対象経費から除外し、還付と補助金の重複を避けています。
2. 公平性の確保
消費税の扱いについては、課税事業者と免税事業者の間で違いがあります。免税事業者は消費税を納める義務がなく、仕入れにかかる消費税を還付されることもありませんが、課税事業者は消費税還付を受けられるため、補助金で消費税分を補填するのは課税事業者と免税事業者の間で不公平が生じる可能性があります。
補助金制度は公的資金を活用しており、公平性が求められるため、課税事業者が消費税分の補助を受け取ることができないように配慮されています。
3. 公的資金の効率的な利用
補助金は税金から拠出されるため、限られた公的資金をできるだけ有効に活用する必要があります。消費税は多くの場合、事業者が還付を受けられるため、その分を補助対象経費に含めることは公的資金の無駄遣いとなりかねません。
公的資金を最大限に活用し、実際に必要な経費(機械設備や試作費など)に集中させるために、消費税分を除外するというルールが設けられています。
補助金における消費税の取り扱いについての例
ものづくり補助金を例に「消費税」の取り扱いに関して、以下の内容を説明します。
1. 補助金交付申請額の算定
補助金の交付申請を行う際、消費税等は補助対象経費から除外する必要があります。つまり、申請時に計上する経費は、消費税抜きの金額で算定しなければなりません。これは、補助金が消費税部分をカバーしないためです。
2. 消費税等仕入控除税額について
課税事業者(免税事業者や簡易課税事業者以外)は、課税仕入れに関する消費税額の還付を受けられる場合があります。そのため、消費税が補助対象経費に含まれてしまうと、補助金と消費税の還付が重複する可能性があります。この重複を避けるため、消費税相当額(消費税等仕入控除税額)は、事前に補助対象経費から減額する必要があります。
3. 補助対象外経費に含まれる消費税等
補助対象外経費として、「**消費税及び地方消費税額(消費税等)」は、補助の対象になりません。これは、補助金が公共の資金であり、消費税の還付制度があるため、消費税部分は補助の対象外となるという考え方に基づきます。
4. 実務的な対応
- 課税事業者の場合、消費税還付の有無を確認し、申請時には消費税抜きの金額で経費を算定。
- 消費税控除がある場合は、その部分を補助金の申請から除外することが必要です。
- 免税事業者や簡易課税事業者の場合は、消費税の控除がないため、対応が異なる可能性がありますが、基本的に消費税は補助対象には含まれません。
小規模事業者持続化補助金における消費税の取り扱い
一方で、「小規模事業者持続化補助金」では一定の事業者については上記のルールの例外となるケースがあります。
1. 免税事業者・簡易課税事業者・2割特例適用事業者の場合
- 免税事業者や簡易課税事業者は、消費税を納める義務がない、もしくは納税額を簡易的に計算できる事業者です。
- 2割特例は、2023年10月に導入されたインボイス制度により、小規模事業者(インボイス発行事業者となる場合)が負担する消費税額を軽減する特例措置です。この措置により、課税売上に対する消費税額の2割のみを納めればよく、仕入れにかかる消費税は控除されません。
2. 例外の内容
上記の事業者に限り、補助金の交付申請額に消費税等を含めることが認められます。つまり、これらの事業者は消費税相当額も補助対象経費として申請でき、その額に基づいた補助金交付を受けることができます。
3. 例外が設けられる理由
- 免税事業者や簡易課税事業者は、消費税の還付を受けることができないため、消費税を補助対象外とする通常のルールが適用されると、彼らにとって不利益が生じることになります。そのため、これらの事業者に対しては消費税も含めた補助金申請が認められています。
- 2割特例の申請者についても、控除対象とならない消費税額が発生するため、その部分を補填する形で消費税を補助対象経費に含めることが認められています。
4. 例外の範囲
- この例外は、あくまで「免税事業者」「簡易課税事業者」「2割特例適用事業者」に対して適用されるため、通常の課税事業者は消費税を補助対象外として申請しなければなりません。
- また、例外として、「旅費に係る出入国税」は、これらの条件に関係なく補助対象経費とされています。これは、出入国に伴う税金が事業に不可避な費用とみなされているためです。