「ものづくり補助金(第22次公募)完全ガイド|採択率・制度・書類・成功と失敗事例まで」

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ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)第22次公募が発表されました。
本記事では、その最新概要や採択率、審査のポイントを、行政書士の視点から詳しく解説します。

21次の締切から間をおかずに次の公募が発表され、いよいよ制度全体としても“一区切り”に差し掛かっているのかな、という印象を受けます。
おそらく来年度以降は、DXやGXといった政策テーマを踏まえて、補助対象・審査基準が大きく見直される可能性もあります。

とはいえ、今はまず「この第22次」です。
例年どおり申請スケジュールはタイトで、準備の遅れは命取りになります。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第22次公募 概要(2025年10月24日公表)

項目 内容
公募名称 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第22次公募)
募集対象 日本国内に本社および実施場所を有し、応募申請時に常時使用する従業員が1名以上の中小企業・小規模事業者等
公募開始 2025年10月24日(金)
電子申請受付開始 2025年12月26日(金)17:00
申請締切 2026年1月30日(金)17:00(厳守)
補助対象枠 ① 製品・サービス高付加価値化枠
② グローバル枠
補助上限額 製品・サービス高付加価値化枠:従業員数に応じて100万円〜2,500万円
(例:1〜5人=750万円、51人以上=2,500万円)
グローバル枠:3,000万円(下限100万円)
補助率 中小企業:1/2 / 小規模事業者・再生事業者:2/3
実施期間 製品・サービス高付加価値化枠:交付決定日から10か月(採択発表日から12か月以内)
グローバル枠:交付決定日から12か月(採択発表日から14か月以内)
特例措置 ・大幅賃上げ特例:補助上限を最大+100~1,000万円引上げ
・最低賃金引上げ特例:補助率を2/3に引上げ(要件あり)
補助対象経費 機械装置・システム構築費(必須)
技術導入費(上限:対象経費総額の1/3)
専門家経費(上限:対象経費総額の1/2)
知的財産権関連経費(上限:対象経費総額の1/3)
運搬費・クラウドサービス利用費・原材料費・外注費などの合計は、機械装置・システム構築費を除き500万円以内(グローバル枠は1,000万円以内)
海外旅費・通訳翻訳費・広告宣伝・販売促進費はグローバル枠(海外市場開拓)に限り対象
補助対象外 単なる省力化・既存工程の置き換えにとどまるものは対象外。新製品・新サービス開発または海外需要開拓を伴う取組であることが必要。
主要審査項目 補助事業の適格性/経営力/事業性/実現可能性/政策面/(大幅賃上げ特例対象の場合)賃上げ取組の妥当性

重要な補足事項

  • 設備投資は必須要件(単価50万円(税抜)以上の機械装置等の導入が必要)
  • 事業計画期間は補助事業終了後3〜5年の任意期間を設定可能
  • 賃上げ目標未達の場合は補助金の返還義務が発生
  • 申請は電子申請システム(jGrants)経由。GビズIDプライムアカウントが必須
  • 従業員21名以上の事業者は、次世代法に基づく「一般事業主行動計画」を「両立支援のひろば」に公表する必要あり(公表には1〜2週間を要する)

採択率の推移と制度変化 ―「選ばれる企業」と「外される企業」の分岐点

ものづくり補助金は、平成24年度の補正予算を起点としてスタートし、すでに10年以上の運用実績を重ねています。
制度の目的は当初から一貫して「中小企業・小規模事業者による革新的な新製品・新サービスの開発と生産性向上」ですが、公募回ごとに審査の視点や補助対象の定義が進化しています。

1. 採択率の推移(第1次~第19次)

初期(2020年~2021年)はコロナ禍の事業再構築を支援する目的も重なり、採択率は50~60%台と高水準でした。
しかし2023年以降、制度の見直しと「省力化補助金」への分離により、採択率は急速に低下しています。

公募回 採択発表日 応募者数 採択者数 採択率
1次 2020年4月28日 2,287 1,429 62.5%
8次 2022年1月12日 4,584 2,753 60.1%
14次 2023年6月23日 3,322 1,662 50.0%
18次 2024年6月25日 5,777 2,070 35.8%
19次 2025年7月28日 5,336 1,698 31.8%

この通り、最新の第19次公募では採択率31.8%。つまり、3社に2社は不採択という厳しい競争環境です。
制度は「革新性」と「付加価値向上」に軸足を移し、単なる省力化や更新投資は省力化補助金に切り離されました。

2. 採択案件の傾向分析 ― 第19次募集に見られるトレンド

ものづくり補助金第19次募集の採択結果を詳細に分析すると、特定の技術や目的、産業分野に焦点を当てた明確なトレンドが浮かび上がります。
採択事業の多くは、単なる設備更新ではなく、AI・DX・高度製造技術・専門特化・環境対応・グローバル展開といったキーワードに集約されていました。

I. DX・AIの活用とデジタル変革

「AI」「SaaS」「DX」「プラットフォーム」といった用語は、今や全業種共通のキーワードです。
製造業では、生成AIを用いたコンプライアンスサポート、需要予測SaaS、半導体金型試作支援など、AIによる高度化が進みました。
サービス業でも、AI接客・健康経営支援・BPOサービス・不動産エージェント向けDXシステムなどが多く採択されています。
また、小売業・採用業界・中古品取引などで業界特化型SaaSやマッチングプラットフォーム開発が急増しています。

II. 高度製造技術と効率化

「高精度」「短納期」「内製化」は、製造業の競争力を高める定番テーマです。
ミクロン単位の超精密部品開発や、次世代偏光OCTなどの高付加価値製品が目立ちました。
また、建設・板金・加工分野では「短納期」「一貫生産」体制構築を目的とした設備投資が多く見られます。

III. 特定分野への専門特化

特筆すべきは、獣医療分野の採択数が急増している点です。
CT・MRI・腹腔鏡・眼科・整形外科など、地域に根差した高度医療機器導入事例が多く、動物医療の高度化が全国的に進展しています。
また、インフラDX(3D測量・ドローン・ICT施工)や半導体・EV関連部品の開発も多く、日本の製造業の構造転換を象徴しています。

IV. 環境・SDGs・GX対応

「脱炭素」「リサイクル」「環境配慮」といったテーマも定着しました。
廃タイヤや木材の再利用、太陽光パネルのリサイクル、再生土砂や環境負荷低減樹脂、水性塗料導入など、循環型ビジネスへの転換が採択の共通項です。

V. グローバル展開と越境EC

グローバル枠では、日本の技術・伝統・食品を海外へ展開する事業が多数採択されました。
靴職人技術の輸出、高付加価値ソースや抹茶の海外販路開拓、西陣織を使ったゴルフ用品やアート商品の輸出など、地域文化と世界市場を結ぶ動きが活発化しています。

これらを総合すると、第19次ではAI/DX、高度医療、インフラDX、環境対応、グローバル展開が主要トレンドであり、
第22次以降もこの傾向が継続する可能性が高いと考えられます。

3. 制度変化の本質 ― 「効率化」から「価値創造」へ

中小企業庁・中小機構の担当者は、「省力化は省力化補助金で、ものづくりは価値創造で」と明言しています。(出典:ものづくり補助金担当者に聞きました
つまり、ものづくり補助金は“顧客に新たな価値を提供する投資”のみを支援する方向に完全移行しました。

審査項目も「経営力」「事業性」「実現可能性」「政策面」の4軸で整理され、特に「付加価値額」「賃上げ」「地域波及効果」が重視されています。
申請書では、単なる“やりたいこと”ではなく、“誰にどんな価値を提供するか”を定量的に説明することが求められます。

4. 第22次への展望 ― 本来の「ものづくり」へ回帰

第22次公募は、こうした流れを受けた「高付加価値化への回帰」となるでしょう。
AIやIoTなどの技術革新、地域資源の活用、海外展開、環境配慮型製造といった要素を取り込みながら、
企業が自社の強みを軸に新しい価値を創り出す提案を行えるかが鍵となります。

採択率30%台という厳しい状況の中で、
求められるのは「計画書の巧さ」ではなく、「経営の本気度と実現力」です。
制度の意図を理解し、自社の戦略に落とし込むことが、採択への最短ルートです。

 

他補助金とのすみ分け ― 課題に応じて最適な制度を選ぶ

補助金は「どれを選ぶか」で結果が大きく変わります。
企業の抱える課題が「人手不足」なのか、「市場開拓」なのか、「新製品開発」なのかによって、活用すべき制度は異なります。
つまり、課題に応じて補助金を検討することが、もっとも現実的で効果的な進め方です。

同じ「中小企業向け補助金」でも、制度設計の目的はまったく違います。
ここでは代表的な4つの補助金を比較し、目的・特徴・向いているケースを整理します。

補助金名称 主な目的 対象事業・特徴 補助上限・率 向いている企業
ものづくり補助金
(製品・サービス高付加価値化枠/グローバル枠)
革新的な新製品・新サービスの開発/生産プロセスの高付加価値化 ・新市場に向けた製品・サービス開発
・既存技術の深化による競争力向上
・海外展開、付加価値額向上を目指す取組
上限750万円~2,500万円(グローバル枠3,000万円)
補助率:中小1/2、小規模2/3
既存事業を成長・拡張したい企業
高付加価値化・賃上げを目指す企業
省力化補助金
(中小企業省力化投資補助金)
人手不足への対応・業務の効率化・自動化の促進 ・自動レジ、配膳ロボット、無人受付などの導入
・既存工程の自動化・遠隔操作化
・IoT/センサー連携による省人化
上限:1,000万円(オーダーメイド枠5,000万円)
補助率:中小1/2、小規模2/3
従業員の作業負担を軽減したい企業
人手不足に悩む業種(宿泊・医療・製造等)
新事業進出補助金
(中小企業等事業再構築促進事業)
既存事業からの新分野進出・事業転換を支援 ・市場や顧客層を変える新製品・新サービス開発
・異業種・新市場参入
・既存リソースを活かした再構築計画
上限:1,000万円~1億円
補助率:中小1/2、小規模2/3
市場が頭打ちの企業/新規事業に挑戦したい企業
小規模事業者持続化補助金 販路開拓・業務改善による小規模事業者の持続的成長支援 ・チラシ・Web制作・展示会出展などの販路開拓
・新サービス導入やPR活動
・店舗リニューアルや設備更新
上限:50万円~200万円
補助率:2/3(賃上げ枠3/4)
創業初期や個人事業主
広報・販促・軽微な設備投資を行いたい事業者

制度の選び方3ステップ

  • 🧭 ① 課題を明確化: 「何に困っているのか」を整理する。
    (例:人手不足なのか、新市場開拓なのか、利益率の低さなのか)
  • 🧩 ② 解決アプローチを考える: 設備導入/新製品開発/販促強化など、取組方法を決める。
  • 💰 ③ 適合する補助金を選ぶ: 目的と手段の組み合わせを確認して、最も整合性の高い制度を選択する。

よくある誤申請と注意点

⚠️ 誤申請例:
・「作業をラクにしたい」→ 省力化補助金(×ものづくり補助金ではない)
・「今の市場が限界、新しい事業を始めたい」→ 新事業進出補助金(×省力化補助金ではない)
・「まずは小さく始めてPRしたい」→ 小規模事業者持続化補助金(×ものづくり補助金ではない)制度を誤ると、内容が良くても審査対象外になることがあります。

企業の成長ステージ別おすすめ制度

企業フェーズ 主な課題 おすすめ補助金
創業・立ち上げ期 販路開拓・PR・初期投資 小規模事業者持続化補助金
成長・安定期 生産性向上・人手不足解消 省力化補助金
拡張・発展期 新製品開発・高付加価値化 ものづくり補助金
転換・再挑戦期 市場転換・業態変革 新事業進出補助金

まとめ ― 「補助金を探す」のではなく、「課題を定義する」

補助金選びで最も重要なのは、制度の条件ではなく「自社の課題の定義」です。
課題が明確になれば、自然と使うべき補助金も見えてきます。
その上で、計画書の中で“なぜこの補助金でなければならないのか”を論理的に説明できることが、採択への近道です。

キタゴウ行政書士事務所からのアドバイス:
補助金は「資金をもらう制度」ではなく、「経営を見直す機会」です。
事業の課題を整理し、制度の意図に沿った計画を立てることで、採択率も実現力も自然と上がります。

 

採択事例分析 ― 現場で見えてきた「選ばれる計画書」

ここでは、守秘義務に配慮しつつ、実際に採択された事例をもとに構成した「事例集」をご紹介します。
実際の支援経験を抽象化し、業種・所在地・設備・名称などはすべて変更しています。
しかし、採択の要因や計画書上の着眼点は実際の傾向に即しています。


事例1:木工製造業 → 加工精度の向上と短納期体制の構築

  • 業種: 木工製造業(フェイク:実際は別の製造分野)
  • 課題: 受注生産型で加工精度のバラツキが発生し、職人の技術依存度が高かった。
  • 導入内容: 高精度木口加工機およびCAD連携ソフトを導入し、設計データと現場作業を統合。
  • 成果: 手作業調整が30%減少。加工データの一元管理により、若手育成も容易に。
  • 採択ポイント: 「単なる省力化」でなく、「熟練技術の継承・デジタル化による新たな価値提供」として整理されていた。
コメント: 技術の標準化や技能継承をテーマにする計画は、審査上「付加価値の持続性」として高評価を受けやすい傾向があります。

事例2:石材加工業 → 多品種小ロット対応による新市場参入

  • 業種: 建築用石材加工(フェイク:実際は異業種)
  • 課題: 従来の大型受注依存から脱却し、一般消費者向け小型製品(インテリア等)に展開したい。
  • 導入内容: 高精度カッターと表面加工システムを導入し、少量多品種対応ラインを構築。
  • 成果: OEM依存を脱却し、自社ブランド製品を新展開。地域クラフト市場で販路開拓。
  • 採択ポイント: 「BtoBからBtoCへの展開」という明確な市場転換が示されていた。
コメント: 市場の変化を踏まえた「ターゲットの明確化」が成功要因。単なる設備更新ではなく、事業構造転換を伴う提案が評価された例。

事例3:原料加工業 → 微粒子化技術の開発による取引先拡大

  • 業種: 木質・バイオ素材製造(フェイク:実際は異素材)
  • 課題: 顧客から粒度精度の高い原料を求められるが、既存設備では対応困難。
  • 導入内容: 高速粉砕装置および粒度分布センサーを導入し、品質データをリアルタイム管理。
  • 成果: 高付加価値製品の供給が可能になり、新規取引先2社を獲得。
  • 採択ポイント: 顧客要望と自社技術開発の関係性を定量的に説明できていた。
コメント: 「技術的課題を具体的に定義し、それを解決する投資であること」が伝わる計画は、採択率が高い傾向にあります。

事例4:建設関連業 → ICT施工技術による生産性向上

  • 業種: 土木・インフラ施工(フェイク:実際は別分野)
  • 課題: 熟練作業員の高齢化と作業効率の低下。
  • 導入内容: 3D測量システムとドローン撮影を活用し、施工前データを自動解析。
  • 成果: 測量時間が50%短縮、設計精度が向上し、顧客満足度が上昇。
  • 採択ポイント: 「ICT施工+安全性向上+人材育成」という社会的意義を伴う構成。
コメント: 建設業では「安全・品質・人材育成」の3要素を組み合わせることで政策整合性が高まり、採択率が向上します。

採択事例に共通する3つのポイント

  • 🎯 1. “誰の課題”を解決するかが明確
    自社の効率化ではなく、「顧客・市場・地域」にとっての価値が説明されている。
  • ⚙️ 2. 技術的裏付けがある
    導入設備・技術・工程の具体性があり、専門的根拠(数値・比較・工程図)が示されている。
  • 📈 3. 経営の持続性に一貫性がある
    補助事業が単発で終わらず、今後の売上・雇用・賃上げにどう繋がるかが描かれている。
キタゴウ行政書士事務所からのアドバイス:
「採択される事業計画」は、奇抜なアイデアではなく、“論理的に整ったストーリー”です。
設備の導入理由、顧客への価値、売上・賃上げの根拠が一貫しているか。
この整合性こそが、審査官に伝わる最大のポイントです。

 

不採択事例分析 ― 「なぜ落ちたのか」を検証する

採択事例と同じくらい重要なのが、不採択となった事例の分析です。
ここで紹介する内容は、実際の支援現場での傾向を踏まえた完全フェイク事例です。
個別企業や地域を特定できる要素は一切含まず、複数の傾向を再構成したものです。


事例1:自動車整備業 ― 「通常業務の延長」で終わった塗装ブース導入

  • 業種: 自動車整備業(フェイク)
  • 申請内容: 作業効率を高めるため、塗装ブースの新設を計画。
  • 審査結果: 不採択。
  • 主な理由: 「高付加価値化」ではなく「通常業務の効率化」と判断された。
  • 問題点: 導入目的が「作業の効率化」にとどまり、顧客への新しい価値提供の説明がなかった。
教訓:
「便利になる」「速くなる」だけでは採択されません。
顧客にどんな新しい価値を提供できるか、明確にすることが必要です。

事例2:食品加工業 ― 「更新」に終始したライン入れ替え

  • 業種: 食品加工業(フェイク)
  • 申請内容: 製造ラインを新型設備に更新し、製造効率を高めたい。
  • 審査結果: 不採択。
  • 主な理由: 「更新投資」と判断され、革新性や新市場創出の視点が弱かった。
  • 問題点: 「既存製品の効率化」はものづくり補助金の対象外。
    また、差別化要素(新製品開発・新顧客層開拓)の記載が欠如していた。
教訓:
老朽設備の更新だけでは採択されません。
「更新後に何ができるようになるのか」を未来志向で説明することが不可欠です。

事例3:建設関連業 ― 「スケールが小さすぎる」投資計画

  • 業種: 基礎工事業(フェイク)
  • 申請内容: 高性能設計IT機器を導入し、設計提案段階の精度を高めたい。
  • 審査結果: 不採択。
  • 主な理由: 投資額・効果が小さく、付加価値額の増加が限定的と判断された。
  • 問題点: 経費総額が極端に小さく、売上・付加価値への波及効果を説明できなかった。
教訓:
投資規模が小さい案件ほど、効果の説明が重要です。
「少額でも戦略的な理由がある」ことを示す根拠(差別化・新分野性)を明確に。

事例4:出張整備業 ― 「目的のブレ」と「独自性の欠如」

  • 業種: 出張型サービス業(フェイク)
  • 申請内容: 専用車両を導入し、顧客先でのサービス提供を拡充したい。
  • 審査結果: 不採択。
  • 主な理由: 類似事業者が多く、差別化ポイントが不明瞭。
  • 問題点: 「なぜ自社がやる意義があるのか」「どんな技術的裏付けがあるのか」が書かれていなかった。
教訓:
“よくある計画”は埋もれます。
「自社にしかできない理由」を、技術・地域・顧客の観点から論理的に説明しましょう。

不採択案件に共通する3つの特徴

  • ⚠️ 1. 「省力化」と「高付加価値化」を混同している
    効率化・自動化を目的とする内容は、ものづくり補助金では対象外です。
  • 🧩 2. 顧客・市場の視点が弱い
    「自社が便利になる」ではなく、「顧客の課題をどう解決するか」を書くことが重要です。
  • 📄 3. 計画書に一貫性がない
    背景 → 課題 → 解決策 → 効果 のストーリーがつながっていないと、審査官は納得しません。
キタゴウ行政書士事務所からのアドバイス:
不採択の多くは「内容が悪い」わけではなく、「書き方が政策意図とずれている」だけです。
審査員が知りたいのは「この投資が社会にどう貢献するか」。
それを“事業の言葉”で語れるかどうかが、採否を分けます。

 

審査官が見ているポイント ― 「経営力」「事業性」「実現可能性」「政策面」

ものづくり補助金の審査は、「様式通りに書かれているか」だけでなく、
その裏にある経営の本気度と整合性を見ています。
審査官は、単なる事業内容の紹介ではなく、「この会社が今後どう成長していくのか」というストーリーを読み取っています。

公募要領に示されている審査項目は、主に次の4点です。

審査項目 審査の視点 評価されるポイント
① 経営力 経営戦略や事業方針が明確であり、外部環境・内部資源を踏まえた合理的な方向性を持っているか。 ・自社の強み・弱みを分析できている(SWOTなど)
・「どこに向かうか」を明確にしている
・本事業が経営計画全体の中でどう位置づけられているかが説明されている
② 事業性 補助事業が利益・付加価値・賃上げに繋がる合理的な計画かどうか。 ・市場規模・ターゲット顧客が具体的に示されている
・売上・利益・付加価値額の根拠が明確(エビデンス付き)
・競合との差別化要素が説明されている
③ 実現可能性 技術的・資金的・人的に、計画を実行できる体制が整っているか。 ・導入機器・工程・技術の裏付けがある
・資金計画が現実的で、自己資金や融資見込みが妥当
・担当者・技術者などの体制が見える形で書かれている
④ 政策面 国の政策方針や社会的要請にどの程度合致しているか。 ・賃上げや地域雇用への貢献が見込まれる
・GX・DX・SDGsなどの政策テーマに対応している
・地域産業・サプライチェーンへの波及効果がある

書面審査で実際に見られるチェックポイント

審査官は数千件の申請書を読むため、数分で「通るか通らないか」を判断します。
特に次の3点は、文章量や構成の問題で落としやすいポイントです。

  • 🔹 1. 「計画の全体像」が見えない
    事業目的・方法・効果がバラバラに書かれていると、審査官は一貫性を感じません。最初に「何を・なぜ・どう実現するか」を整理しておくことが重要です。
  • 🔹 2. 「数字の根拠」がない
    「売上が2倍になる」「生産性が向上する」といった表現は、根拠のない希望として扱われます。計算式・比較表・実績データを活用して、定量的に裏付けることが大切です。
  • 🔹 3. 「誰の課題を解決するのか」が曖昧
    審査官が最も評価するのは「顧客や社会にとって意味がある事業か」。
    自社都合だけの設備導入は、政策的妥当性が低く見なされます。

加点項目の活用も採択率を左右する

加点項目(経営革新計画、事業継続力強化計画、賃上げ実績、被用者保険適用、事業承継/M&A等)を押さえているかどうかも採択率に大きく影響します。
近年は、加点が1~2項目入るだけで採択率が10~15%向上する傾向があります。
特に、経営革新計画承認書の写しは最も確実な加点として知られています。

「審査官の心理」を知ることが通過率を高める

審査官が求めているもの:
・補助金がなくても一歩踏み出せそうな企業努力
・単なる機械購入ではなく、経営の変革意志
・具体的なデータと明快な論理「弱みを正直に書く企業」は好印象を持たれます。
「問題を正しく認識している=経営力がある」と見なされるためです。

4項目をストーリーでつなぐ ― 「一貫性」が最大の武器

優れた事業計画書には、必ず4つの項目を一本の物語としてつなぐ構成があります。

  1. 経営力: 自社の現状と方向性(「なぜ今それをやるのか」)
  2. 事業性: 市場・顧客・売上の見通し(「誰に何を提供するのか」)
  3. 実現可能性: 体制・資金・技術(「どうやって実行するのか」)
  4. 政策面: 社会的意義と波及効果(「それが地域・社会にどう貢献するのか」)

この4つの流れが自然に読める計画は、「読んで納得できる計画」=採択される計画です。
逆に言えば、どれか一つでも抜け落ちると、全体の説得力が崩れます。

キタゴウ行政書士事務所からのアドバイス:
「審査官に伝える」のではなく、「審査官が理解しやすいように構成する」。
これは文章力の問題ではなく、経営の論理構築力の問題です。
計画書はプレゼン資料ではなく、あなたの会社の未来を見せる設計図です。

提出書類・申請準備チェックリスト(第22次公募)

ものづくり補助金の申請では、提出書類の不備や漏れが審査対象外(=自動不採択)につながります。
ここでは、「すべての申請者が提出すべき書類」と、「該当者のみ提出する書類」を整理しました。
さらに、申請前に準備しておくべき実務チェックリストも掲載しています。

I. 全ての申請者が提出すべき書類

No. 提出書類 内容 形式 注意点
1 基本情報 事業者情報・従業員数・補助金実績・経費明細・資金計画などを電子申請システムへ入力。 システム入力 入力漏れや誤字は即不採択の原因になります。
2 事業計画書 電子申請システムで入力し、図表・画像をまとめたPDF(A4・5ページ以内)を添付。 システム入力+PDF添付 5枚超は審査対象外。本文をPDFで添付するのは不可。
3 補助経費に関する誓約書 経費の適正使用に関する誓約。 システム上で誓約 チェック忘れに注意。
4 賃金引上げ計画の誓約書 賃上げ要件達成に関する誓約。 システム上で誓約 後日の検証対象。内容の整合性を確保。
5 決算書等 法人:直近2期分のB/S・P/L・販管費明細書など
個人事業主:確定申告書一式。
PDF提出 創業1年未満は収支予算書でも可。
6 従業員数の確認資料 法人事業概況説明書、労働者名簿等。 PDF提出 提出時点の最新情報を反映。

II. 該当する申請者のみ提出する書類

No. 提出書類 対象者 内容 形式
1 次世代法一般事業主行動計画URL 従業員21名以上の事業者 厚労省「両立支援のひろば」に公表されたURLを記載。 システム入力
2 再生事業者確認書 再生事業者に該当する場合 再生事業者であることを証明する書類。 PDF提出
3 大幅な賃上げ特例計画書 特例の適用を希望する場合 所定様式による計画書を提出。 PDF提出
4 資金調達確認書 金融機関から資金調達する場合 金融機関発行の確認書を添付。 PDF提出
5 海外事業関連資料 グローバル枠申請者 海外事業計画書、契約書案、市場調査報告書など。 PDF提出

III. 加点を希望する場合に必要な資料

加点項目 提出資料 注意点
経営革新計画 有効な「承認書の写し」および計画書。 有効期限内であること。計画期間が確認できる書類を添付。
事業継続力強化計画 受付番号・有効期間をシステム入力。 更新中の場合は最新情報を明記。
地域・事業所内最低賃金引上げ 指定様式+賃金台帳写し。 対象従業員と期間の整合性を必ず確認。
被用者保険 「特定適用事業所該当通知書」 任意適用事業所の場合のみ加点対象。
事業承継/M&A 株式譲渡契約書、登記簿謄本、資産一覧など。 申請締切日から過去3年以内の完了事例が対象。

IV. 申請前に準備しておくべき項目

  • GビズIDプライムアカウント
    発行まで2〜3週間かかることがあるため、早期取得が必須です。
  • 見積書(2社以上)
    単価50万円以上の設備は、同条件で複数見積もりが必要。準備段階から収集を。
  • 次世代法行動計画
    従業員21名以上の企業は「両立支援のひろば」への掲載が必須。公表まで2~3週間前後かかります。
  • 支援機関の申告
    申請時に「認定経営革新等支援機関」の支援内容・報酬・契約期間を記載。未申告は虚偽申請扱いとなります。
注意:
1つでも書類の欠落・不備がある場合、審査対象外(形式不備)になります。
「PDF名の付け方」「ページ数制限」「提出様式の順番」も審査で確認されます。
キタゴウ行政書士事務所からのアドバイス:
補助金の成否は「計画書の中身」以前に「形式審査の通過率」で決まります。
まずは提出書類の正確性と整合性を徹底すること。
それが採択への第一歩です。

キタゴウ行政書士事務所の見解とアドバイス

ものづくり補助金は、制度としては長い歴史を持ちながらも、
その時々の政策トレンド(DX・GX・賃上げ・海外展開など)を色濃く反映する「進化型補助金」です。
一見シンプルな制度に見えても、採択の分かれ目は「計画の整合性」と「政策適合性」にあります。

私どもキタゴウ行政書士事務所では、補助金を単なる“資金調達手段”としてではなく、
経営計画を磨き上げるツールとして活用していただくことを重視しています。
つまり、「補助金に合わせて計画を作る」のではなく、自社の戦略に沿って補助金を選ぶという考え方です。

当事務所が考える“採択の鍵”は3つです:

  1. 一貫性: 背景・課題・解決策・効果が一本のストーリーでつながっていること。
  2. 納得性: 審査官が「確かにこれは必要だ」と思える具体的根拠があること。
  3. 政策性: 国の重点テーマ(DX、GX、賃上げ、人材育成など)に合致していること。

これらを外さない限り、どの公募回でも一定の採択可能性があります。

また、補助金の採択を「ゴール」ではなく「スタート」と捉えることも大切です。
交付申請・実績報告・補助事業完了後のフォローアップまで、行政手続は想像以上に複雑です。
採択後のサポート体制まで見据えて、慎重にパートナーを選定することをおすすめします。

よくあるご相談内容

  • 💬 どの補助金を選ぶべきか迷っている(ものづくり/省力化/新事業進出/持続化など)
  • 💬 計画書の構成や数値の整合性に不安がある
  • 💬 GビズIDや書類提出などの電子申請手続に自信がない
  • 💬 採択後の実績報告・精算に手が回らない
当事務所では、次のような形でサポートを行っています:

  • ・事業計画書の論理構成・数値根拠のブラッシュアップ
  • ・申請書式の入力・電子申請手続き支援
  • ・採択後の交付申請・実績報告フォロー
  • ・他補助金(省力化・新事業進出・持続化等)との比較相談

お問い合わせ・ご相談はこちら

本記事の下部にお問い合わせフォームがございます。
「ものづくり補助金について相談したい」「申請の方向性を確認したい」など、
簡単なご相談でもお気軽にご記入ください。

ご希望に応じて、オンライン面談(Google Meet対応)も承ります。

キタゴウ行政書士事務所
代表行政書士 長田 怜也(Ryoya Osada)
認定経営革新等支援機関|経済産業省認定

経営に寄り添い、数字と現場に強い補助金支援を。
補助金申請を「経営の再設計」として一緒に考えます。

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