ものづくり補助金 第20次募集 審査項目のポイントと対象経費について

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ものづくり補助金20次公募の概要についてはコチラ

ものづくり補助金の採否を決めるのは事業計画書の出来次第ということもあり、事業計画書を書く上でやはり「審査項目」を押さえておくのは当然ですね。

ここでは、審査項目と、対象経費についても外せないので、そのあたりを解説してゆこうと思います。

ものづくり補助金の審査項目とは?通る申請書に必要な視点

ものづくり補助金の申請は、単なる「設備導入の願望」では通りません。
採択されるかどうかは、提出する事業計画書が審査項目に対してどれだけ的確に答えているか──にかかっています。

審査項目は、基本的に以下の5つです(※特例申請を行う場合は6項目になります)。

  1. 補助事業の適格性
  2. 経営力
  3. 事業性
  4. 実現可能性
  5. 政策面
  6. (※大幅な賃上げ特例を申請した場合は「賃上げに対する妥当性」も加わります)

この記事では、それぞれの審査項目が「何を見ているのか」「どう書けば評価されやすいのか」を、実務的な観点からわかりやすく解説していきます。
「どれだけ良い事業でも、伝え方がズレていると落ちる」──この補助金の本質を押さえて、事業計画書の説得力を高めましょう。

審査項目1:補助事業の適格性

公募要領に記載の対象者、対象事業、対象要件等を満たしているか。

基本的に、そもそも適格事業者かどうかということで、このあたりは「対象外事業」や「対象外事業者ではないか」という点からみてゆくのが良いと思います。

【対象外事業の代表例】

  • 外注先への丸投げ(自社での業務が実質的に存在しない)

  • コインパーキングなどの資産運用型

  • 不動産投資(賃貸・売買・転売を目的とした事業)

  • 風俗営業(風営法第2条に定める各種業態)

  • 介護保険・診療報酬等を主な収益源とする事業

  • 重複・類似事業(フルーツサンド事件)
    補足:「フルーツサンド事件」とは?
    事業再構築補助金において、地域も会社も異なる複数の申請で「フルーツサンド事業」がほぼ同じ内容で採択されていた事案です。
    財務省はこれを「補助金依存の強まり」と批判し、形式的な差分だけで新規性を主張する申請に対する審査が一層厳格化されました。
    現在では“内容の独自性”や“構想の裏付け”が強く求められています。

【対象外事業者の代表例】

  • 過去16か月以内に、ものづくり補助金・新事業進出補助金・事業再構築補助金のいずれかで採択され、補助事業実施中の事業者

  • 「みなし大企業」に該当する中堅・親子会社関係の法人

  • 課税所得15億円超の高収益企業

  • 代表者が同じなどにより、実質的に同一事業者とみなされる企業

  • 反社会的勢力やそれに準ずる関係者を含む事業体

その他、基本的な要件未達(そもそも賃上げが計画されていないなど)もこの段階で見られます。

審査項目2:経営力

⚫本事業により実現したい経営目標が具体化されているか。
⚫市場・顧客動向を始めとした外部環境と、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)等にかかる強み・弱みの内部環境を分析したうえで事業戦略が策定され、その中で、本事業が効果的に組み込まれているか。会社全体の売上高に対する本事業の売上高が高い水準となることが見込まれるか。

ここから先は、19次募集の参考様式と照らし合わせながらどう書いたらいいかなどを具体的にお話しできればとも思います。(※20次募集の参考様式次第で変更があり得ます。ご注意ください)

▶ どこに書く?:具体的内容①・②が該当

  • ① 今回の事業実施の背景(1000字)
    → 外部環境と内部資源、課題の整理まで

  • ② 会社全体の事業計画(1000字)
    → 中長期ビジョンと事業の位置づけ、戦略の整合性

この審査項目は、「そもそも戦略的に何を目指しているのか?」という“経営そのものへの理解度と一貫性”が問われます。

▶ 書き方のポイント

① 今回の事業実施の背景:

  • 市場動向・技術・規制や社会課題などの「外部環境」を客観的に整理

  • 自社のヒト・モノ・カネ・情報などの「内部資源(強み・弱み)」を冷静に分析

  • その上で「だからこそ、今この課題を解決しなければならない」という流れを作る

② 会社全体の事業計画:

  • 経営理念(あれば)と、全体としてどうなりたいかの中長期ビジョン

  • 現在の経営課題に対し、どのような展開で事業を伸ばしていくか(3年後・5年後)

  • その流れの中で、今回の補助事業が「会社のどこに位置づけられるのか」を説明

  • 本事業が単独の小規模な挑戦ではなく、全体戦略の一部であることを明確に

▶ よくあるNGパターン

  • 「外部環境」が自社の感想レベルになっている(例:「最近は競争が激しい」だけ)

  • 「強み・弱み」が自己評価で終わっている(例:「当社はアットホームです」など)

  • 補助事業が会社の全体戦略から浮いている(“その設備どこで活きるの?”状態)

  • 売上予測の中で「本事業の寄与割合」がぼんやりしている(貢献が見えない)

審査項目3:事業性

⚫本事業により高い付加価値の創出や賃上げを実現する目標値が設定されており、かつその目標値の実現可能性が高い事業計画となっているか。
⚫本事業の課題が明確化され、課題に対する適切な解決方策が示されているか。
⚫本事業により提供される新製品・新サービスや海外需要開拓の対象となる市場の規模や動向の分析がされているか。当該市場は今後成長が見込まれるか。
⚫本事業により提供される新製品・新サービスや海外需要開拓が顧客に与える価値は何か。顧客ターゲットが明確か(顧客の特徴(属性・商圏等)が具体的に特定できているか)。顧客ニーズの調査・検証がされているか(対価を支払ってでも本事業により提供される新製品・新サービスを選択したいと考える顧客がどの程度存在するか)。本事業により提供される新製品・新サービスが顧客から選ばれる理由を理解しているか。
⚫本事業により提供される新製品・新サービスと競合する他社製品・サービスや代替製品・サービスに関する分析がされているか。競合する他社製品・サービスや代替製品・サービスに対して、本事業により提供される新製品・新サービスは差別化がされ、優位性を有しているか。

▶ どこに書く?:具体的内容③・⑤・⑥が該当

  • ③ 今回の事業/事業実施期間のアクション(1000字)
    → 具体的に「何をどうやるか」を明記する欄

  • ⑤ 今回の事業の革新性・差別化(1000字)
    → 顧客価値・競争優位・独自性を示す欄

  • ⑥ 市場に与える効果/付加価値額の増加(1000字)
    → 市場性・ビジネスモデル・売上構想を整理する欄

▶ この項目の本質:

「その事業、実現可能なのか?」「誰が買うのか?」「なぜ選ばれるのか?」
つまり、「あなたの事業に本当に価値があるか」が厳しく問われる審査項目です。

▶ 書き方のポイント

 ③事業の具体的アクション

  • どんな製品・サービスを開発・提供するのかを明確に(ふんわりNG)

  • 「いつ」「誰が」「何をする」という工程レベルでアクションを書く

  • KPI(期間中の定量目標)と達成手段(人材・資金・スケジュール)を整合させる

  • 技術力・体制・資金調達力など、実現可能性を支える根拠を明示する

 ⑤革新性・差別化

  • 顧客にとって“何が新しいか”を明確に(自社にとって新しいではNG)

  • 想定するターゲットの属性・ニーズと対応を具体的に記述

  • 競合や代替サービスとの比較、選ばれる理由を明文化

  • 自社の強み・ノウハウとの結びつきを意識して記載

 ⑥市場への影響・効果

  • 対象市場の規模や動向(できれば数値データと出典あり※補足資料も活用する)

  • 顧客ニーズの裏付け(アンケート・実績・ヒアリング結果など。市場ニーズの有無。)

  • 価格・性能面での優位性/収益性の見込み/量産・展開時の売上予測

  • 販売方法やビジネスモデルも明示(“作って終わり”はNG)

▶ よくあるNGパターン

  • 顧客ニーズが「何となく需要がありそう」で止まっている

  • 他社との違いが「当社独自の想い」でしか語られていない

  • “成り立つ仕組み”が示されておらず、買ってもらえるか不明確

  • 実施スケジュールがあいまい or 達成方法が精神論的(例:全力で頑張る)

▶ この項目では・・

「売れるのか?続くのか?再現性はあるのか?」という、補助金=国の投資先としての妥当性を見られています。「これは“机上の空論”ではない」と思わせられれば、全体の説得力が一段上がります。

審査項目4:実現可能性

⚫本事業に必要な技術力を有しているか。また、当該技術力が競合する他社と比較してより優位な技術力か。
⚫本事業に必要な社内外の体制(人材、専門的知見、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、本事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金調達が見込まれるか。
⚫本事業の事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。
⚫本事業は投入する補助金交付額等に対して、想定される売上・収益の規模等の費用対効果が高いか。また、本事業の内容と補助対象経費とが整合しており、費用対効果が明確に示されているか。

▶ どこに書く?:具体的内容③・④・⑥・⑦が該当

  • ③ 今回の事業のアクション(1000字)
     → スケジュール、体制、人材、資金、遂行力

  • ④ 今回の事業に要する経費(1000字)
     → 投資内容の合理性、補助対象経費との整合性

  • ⑥ 市場に与える効果・付加価値額の増加(1000字)
     → 成果の見通しと、その実現の道筋

  • ⑦ 賃金引上げ計画(500字)
     → 収益の見通しに裏付けられた賃上げ目標

▶ この項目の本質

どれだけ素晴らしい構想でも、実現できなければ意味がありません。
この項目は、「その事業をちゃんとやり遂げられるのか?」という、事業遂行力の審査です。

▶ 書き方のポイント

技術力

  • 自社が保有している技術・ノウハウ・開発経験を記載(人でも会社自体でも)

  • 必要があれば、連携する外注先のスキルや実績も明示

  • 他社と比較して優れている点(速度、精度、汎用性、コストなど)を具体化

体制・人材

  • 代表・開発担当・経理など、社内体制が明確か。特に経理担当は大事。

  • 外注を活用する場合、その管理責任体制や関係性も説明

  • 補助事業遂行中のスケジュールと人的リソースに無理がないかを示す

財務・資金調達

  • 現在の財務状況と、それに基づく資金調達の見通し(自己資金・融資など)

  • 補助金頼みになっていないか、という視点も持つ

  • 金融機関との関係性(例:取引先金融機関からの資金確保済み など)

 スケジュール・KPI

  • いつ、どの工程を、誰がどう進めるか(具体的に)これは補足資料で示す必要があります。

  • 進捗管理やリスク回避の方法(納期遅れ対策、代替手段など)も意識

経費の整合性

  • 投資内容と実現したい効果の関係性(=費用対効果)が明確であること

  • 「なぜこの機械が必要なのか」「なぜこのスペックなのか」

  • 補助対象経費だけを申請しており、対象外は除かれていること

対象経費について

ここで、経費について出てきたので、対象経費と対象外経費についてまとめてゆきます。

※グローバル枠のみの経費は割愛しております。

経費分類 概要 主な留意点
機械装置・システム構築費 単価50万円以上の設備。本事業専用の装置やソフト、据付・改良も含む。 型番明記、効果との関連説明が必須。複数見積や按分も要検討。
運搬費 機械装置等の購入に伴う運搬・配送料など。 実施期間内の発注・支払が必須。
技術導入費 知的財産権や技術の導入に係る費用(上限1/3)。 契約書必要。他経費(外注・専門家)と併用不可。
知的財産権等関連経費 特許取得や翻訳などの関連手続き費用。 補助期間内に出願完了が条件。庁納付料や訴訟費は対象外。
外注費 加工・設計・検査などの外部委託費(上限1/2)。 委託契約必須。装置購入は構築費に。特定支払の重複は不可。
専門家経費 学識経験者や技術顧問などへの指導・助言料。 謝金上限あり。事業計画支援者は対象外。
クラウドサービス利用費 専用クラウド利用料(サーバーレンタルなど)。 ハード購入費はNG。按分で期間内分のみ。
原材料費 試作品開発に必要な材料・副資材。 補助期間内に使い切る。残品NG。管理帳簿や写真が必要。
補助対象外経費 建屋・車両・光熱費・通信費・家具・文房具・PC等の汎用品、
自社人件費、税務申告・弁護士費用、親族企業への支払、その他社会通念上不適切な経費など。

▶ よくあるNGパターン

  • 「やる気」と「熱意」だけで乗り切ろうとしている

  • 体制が代表1人しか見えず、属人的でリスクが高い

  • 外注先の能力や信頼性を何も説明していない

  • 機械装置の導入理由が「何となく良さそう」「あった方が安心」になっている

  • 経費の説明がスペックの羅列になっており、「なぜそれが必要か」の記述がない

▶ この項目では・・

この項目で見ているのは夢や構想の大きさではなく、実現の信頼度と安定性です。
特に、設備投資を伴う補助金であるため、「その設備を活かせる体制が本当にあるのか」は重視されます。

審査項目5:政策面

⚫地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等や雇用に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。
※以下に選定されている企業や承認を受けた計画がある企業は審査で考慮します。
▶地域未来牽引企業業(https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/chiiki_kenin_kigyou/index.html)
▶地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画 (https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/miraitoushi/jigyou.html)
⚫異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取り組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。また、事業承継を契機として新しい取り組みを行うなど経営資源の有効活動が期待できるか。地域の持続的発展に寄与することが期待できるか。
※アトツギ甲子園地方大会出場以上の企業は審査で考慮します。(https://atotsugi-koshien.go.jp/)
⚫先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施、経済社会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイノベーションを牽引し得るか。
⚫成長と分配の好循環を実現させるために有効な投資内容となっているか。
⚫米国の追加関税措置により大きな影響を受ける事業者であること。

▶ どこに書く?:入力様式⑧「地域の資源や地域経済への貢献(500字以内)」

審査項目⑤の政策評価構成と準拠する政策文書

審査観点 要旨 準拠政策・出典 記載方針の例
① 地域未来牽引 地域の特性を活かして高付加価値を創出し、雇用や他事業者へ波及する地域経済牽引型の事業か 地域未来投資促進法(2017年)
地域経済牽引事業基本方針
地域の中核産業を活かした新製品・サービスの開発により、●●地域の雇用・産業集積を促進する/地域の他事業者とのサプライチェーン再構築など波及効果の明示
② 連携・共創 他の事業者や大学等との連携による高度化・新たなプラットフォーム・製品開発等 中小企業等経営強化法(第14条 連携)
中小企業連携促進施策
「地域●●産業協議会」との共同開発による製品開発/異分野との協業により社会課題に対応
③ アトツギ活用 事業承継を契機に新しい取組を実施/地域産業の持続可能性 中小企業白書2023
アトツギ甲子園(経産省主催)
2023年に親族承継し、ITを活用した業態転換を実施。地元商工会議所と連携した販路開拓支援等
④ GX・DX・イノベーション CO₂削減、デジタル活用、新ビジネスモデルの創出 「GX実行会議 中間整理」(2023年)
中小企業デジタル化応援隊事業
イノベーション政策大綱(内閣府)
AI制御付き加工作業システムの導入による省人化とCO₂削減/IoT連携の高度化で工場DXを推進
⑤ 成長と分配の好循環 賃上げ・人材投資・地域所得向上等 成長と分配の好循環実現会議(2022年〜)
令和6年度経済財政運営と改革の基本方針
新事業により2名増員し平均年収も30万円引き上げる計画/分配強化の意思表示と賃上げ数値の明示
⑥ 米国追加関税対応 米中摩擦による特定業種への影響緩和策 特定なし(個別措置) 当社製品(××部品)は米国向け比率が高く、追加関税により売上15%減の見通し。代替市場の開拓に向けた新ラインの立ち上げ等

審査項目・経費一覧を踏まえて

ものづくり補助金は、単なる「資金調達の手段」ではなく、
事業の骨格を問い直す機会でもあります。

「補助金のための事業」ではなく、「事業のための補助金」であることを忘れずに、
自社にとって本当に必要な投資かどうかを、冷静に見極めてみてください。

本記事が、その検討の一助となれば幸いです。

なお、計画書の構成や書きぶりに悩んだとき、
あるいは採択後の実績報告に不安がある場合などには、
専門家の力を借りるのも一つの選択肢です。

──ご自身のペースで、焦らず進めていきましょう。

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