補助金の採択辞退と事故・廃止とは

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さて、「採択辞退」という言葉に耳慣れない者もいるだろう。だが、この一言に込められた重さを甘く見てはいけない。補助金を申請し、採択を勝ち取った者が、栄光の座を自ら手放す。そんな決断を下さねばならない状況が、この国では確かに存在している。そして、特に「事業再構築補助金」では、その決断が珍しいものではなくなってきたのだ。

採択辞退の手続きは、冷たく淡々としたルールのもとに進められる。あたかも機械が人間を裁くような様相だ。なぜなら、事業再構築補助金の公式サイトには「採択辞退のマニュアル」なるものが堂々と公開されている。それは、辞退が「想定外」ではなく、「日常茶飯事」と化している現実を物語る。心中を察してくれる温かさは、どこにもない―――――

(引用:民明書房刊 『補助金BATTLE ROYAL』)

はじめに

ここでは、補助金における「採択辞退」や「事故・廃止」について解説します。

採択辞退とは、採択発表後に補助金交付候補者として選ばれたものの、「交付決定前」に補助事業の実施を辞退することを指します。

一方、事故・廃止とは、「交付決定後」に補助事業の実施を中止したり、事業そのものを廃止したりすることを指します。

交付決定を受けているかいないかのタイミングで、名称は違いますし、手続きも、そしてその「重さ」も異なります。

補助金の採択辞退とは

補助金の採択辞退とは、採択を受けた後に交付決定を受けることなく、補助事業の実施を断念する決断を指します。

これまで採択辞退はあまり一般的ではありませんでした。しかし、令和5年補正予算まで実施された「事業再構築補助金」では、こうした辞退が頻発するようになりました。その背景には、以下のような理由があります。


1. 交付申請の長期化

事業再構築補助金では、交付申請の手続きが長期化し、その結果、以下の問題が発生しています:

  • 事業の実施が不可能になる:事業計画の実行が期間的な制約や品質維持の観点から困難になる。
  • 事務負担の増加:度重なる基準変更や要件の追加に伴い、追加書類の提出や差戻しが発生し、事務的な負担が増える。

こうした状況により、当初の事業計画通りに事業を進めることができず、やむを得ず辞退するケースが多く見られます。


2. 経営状況や社会情勢の変化

補助金申請から採択発表までには2~3か月以上かかることが一般的です。その間に以下のような変化が生じることがあります:

  • 物価の上昇:計画当初よりコストが増加し、補助金を利用しても事業を実施するのが難しくなる。
  • 経営状況の悪化:売上減少や資金繰りの悪化により、補助金を活用する余力がなくなる。
  • 社会的な変化:特段の政策変更や市場環境の変化により、事業の実行が困難になる。

これらの要因が重なり、事業を進めることができなくなる場合もあります。


採択辞退は、申請者にとっても事務局にとっても想定外の事態であることが多いですが、申請後の長期的なプロセスや予期せぬ社会・経済的な変化がその要因となっています。特に、事業再構築補助金のような大規模な補助金では、こうした辞退の増加が顕著に見られます。

採択辞退の手続き方法

ここでは、採択辞退が多いとされる「事業再構築補助金」における採択辞退の手続き方法について説明します。

事業再構築補助金では、採択辞退が頻発しているためか、「採択辞退のマニュアル」が公式に公開されています。(※事業再構築補助金公式ホームページの「交付申請」のページ最下部に掲載されています。)このマニュアルの存在自体が、採択辞退の多さを物語っています。

(事業再構築補助金ホームページ⇒交付申請のページの最下部)

手続き方法の概要

採択辞退の手続きは、原則として「Jグランツ(jGrants)」を通じて行います。マニュアル内には「参考様式1」などが用意されていますが、これは辞退理由の下書きに使用する程度で問題ありません。

事務局への事前連絡

実際に採択辞退を申請する前に、「事務局への電話連絡」を行うのが一般的な手順です。この連絡により、具体的な対応方法や追加の書類提出が必要かどうかが確認できます。

以下の点に注意してください:

  • 事業者によっては「参考様式1」の清書や、正式な辞退理由書の提出を求められる場合があります。
  • 一部のケースでは、Jグランツを使用せず、電話連絡だけで手続きが完了する場合もあります。
  • 事務局の指示が異なる場合があるため、まずは相談することが大切です。

必要な情報・書類

以下の情報や書類を事前に準備しておくとスムーズに進められます:

  • 整理番号:Rから始まる数字とアルファベットの組み合わせ。
  • 補助事業名:申請した補助事業の正式名称。
  • 辞退理由:簡潔かつ明確に記載することが重要です。
  • 添付資料(任意):辞退理由を補足する資料がある場合、ZIPファイル形式にまとめて提出します。

まずは事務局に「相談」を

他の補助金の場合も、採択辞退をする場合はしかるべき、事務局にまずは「相談」することが第一です。

そのうえで方法や様式などを教えてくれるので、また、それが「作法」のようにもなっているので、まずはその面、お願いいたします。

補助金の「事故」とは

大雨、台風などの異常気象による甚災地域の指定、火事、地震など事業者の責任によらない事由により補助事業を予定の期間内に完了することができないと見込まれる場合又は補助事業の遂行が困難となった場合、速やかに事務局に連絡し、指定の様式を提出し事務局の指示を受ける必要があります。

この場合が「事故」です。ここでのポイントは「事業者の責任によらない事由」ということです。

指定の様式ですが、ものづくり補助金の場合は「様式4」ですが、どこにあるのかわかりにくかったりします。(このページ の、「補助事業の手引き・各種様式」タブの中にZIPファイルのダウンロードリンクがあり、その中です)

ですので、まずは事務局へ何はなくとも「速やかに」御相談ください。

補助金の「廃止」とは

補助金の「廃止」には、さまざまなケースが考えられます。

たとえば、「事故」による廃止のほか、交付決定を受けて補助事業を進めていたものの、途中でつなぎ資金を用意できなかったり、忙しさのあまり補助事業に取り組むのを忘れてしまったりすることがあります。これらは「事業者の責任によらない」ケースではなく、事業者側に責任がある場合と言えるでしょう。

廃止は、補助金が交付される前だけでなく、補助金が振り込まれた後にも発生する可能性があります。たとえば、事業化実施報告の対象期間である5年間を経ずに、設備を売却してしまった場合などが該当します。このような場合も、「廃止」として扱われることになります。

「事業者の責任」の判断基準

「事業者の責任」に該当するかどうかの判断基準については、基本的に「天災」などの不可抗力が認められない限り、ほぼ事業者の責任とされるケースが多いのが実情です。不安な場合は、まず事務局に相談することをお勧めします。

廃止手続きについて

廃止は「補助事業の中止」とも呼ばれることがあります。この場合、正式に「補助事業中止(廃止)申請」を行い、事務局から「承認」を得る必要があります。手続きを怠ると、さらに大きなトラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。

ちなみに、違反が摘発され「交付決定の取り消し」処分や「補助金返還の措置」を受けた場合についてですが、これも広義では「廃止」に含まれると言えるかもしれません。ただし、こうしたケースに直接遭遇したことがないため、具体的な手続きについては断言できません。そのため、万が一このような事態が発生した場合は、速やかに事務局へ確認し、指示を仰ぐようにしてください。

まとめ

項目 採択辞退 事故 廃止
タイミング 採択発表後~交付決定前 交付決定後~事業実施中 交付決定後~事業完了後
主な原因 経営変化、資金調達困難 書類不備、不正、要件違反 経営悪化、報告義務違反
影響 次回応募への影響は少ない 補助金返還、信用低下 補助金返還、信用低下
手続き 辞退申請(事務局に相談) 是正報告(事務局の指示に従う) 中止申請(事務局の承認を得る)

 

 

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