飲食店や小売業が抱える災害リスクには、どのようなものがあるのでしょうか?お客様・従業員を守るために、どのようなことができるのでしょうか?
防災・減災は企業が行うものではなく、多くのお客様と直接関わる飲食店や小売業も積極的に取り組む必要があります。
しかし防災・減災対策に取り組むにも、防災設備投資に必要な資金を捻出できないという悩みを抱えている経営者の方が多いでしょう。
その悩みを解消してくれるのが、2019年7月16日に施行された「中小企業強靭化法」の認定制度である「事業継続力強化計画」です。
そこで今回は、飲食店や小売業が抱える災害リスクとともに、事業継続力強化計画の認定制度についてわかりやすく解説していきます。
飲食店・小売業の災害リスクと対処法
飲食店や小売業か抱える災害リスクには、以下の4つを挙げることができます。
- 災害時に迅速で冷静な判断ができない
- 災害時にスタッフを出勤させてしまう
- 帰宅困難時の対処法が不明
- 災害後の資金調達ができない
ここからは上記4つのリスクに対して、飲食店や小売業がとるべき防災・減災対策を解説していきます。
1.災害時に迅速で冷静な判断ができない
防災マニュアルを作成することで、災害時にどう対応すればいいのか全ての従業員と経営者が共有することができ、有事に迅速で冷静な判断ができるようになります。
マニュアルを作成するだけではなく、いつでもみられるようにグループチャットなどに固定してシェアしておくことや、災害時に指示を出す防災責任者を決めておくことが重要です。
防災責任者を決める際は、防災責任者が休みの時に災害が発生した場合に備えて、代行者も決めておくと安心です。
また、災害時に店舗を営業するのかクローズするのか決めておくといいでしょう。
2.災害時にスタッフを出勤させてしまう
日本は一般的に公共交通機関が動いていれば出勤することが多いですが、台風が接近し直撃することが分かっている場合や、震災時に従業員を出勤させるのか事前に決めておきましょう。
近年大型台風が接近している場合、安全を優先して公共交通機関を平時にストップさせることが多くなりました。
これに伴い店舗を臨時休業する場合も増えてきているので、安全を優先するためにできる対策を考えておきましょう。
また、事前に従業員を災害時に出勤させるのかを決めておくことで、二次災害を防ぐことができます。
迅速な連絡が取れるように、全ての従業員と経営者がお互いに連絡先を把握しておくことも重要です。
災害時は電話が不通となることが珍しくないので、ビジネス用SNSを活用するようにしましょう。
3.帰宅困難時の対処法が不明
災害時に公共交通機関がマヒしてしまった、あるいは通勤ルート上で建物が倒壊して通れないなど、帰宅困難に陥ることも想定しておきましょう。
帰宅困難時は店舗で一晩過ごした方が安全である場合も珍しくありません。
授業員やお客様が一晩店舗で過ごせるように、毛布や食料・水・救急用品など十分な量を備蓄しておきましょう。
4.災害後の資金調達ができない
東日本大震災以降、防災意識が高まったことで飲食店や小売業では防災・減災対策を行なっている店舗が増えました。
しかしどんなに対策をしていても、被害が起こることを想定しておく必要があります。
店舗に甚大な被害が起こった際、営業再開に向けて資金調達を行う必要があるので、災害前にどのような制度や補助金などがあるのかを把握しておきましょう。
実際に災害が起こった後に被害額を計算することが難しいので、ある程度被害が出ることを想定して、災害前に試算しておくとスムーズに被害額を計算することができます。
災害に遭ったら、速やかに金融機関へ迅速な相談や手続きを行うことも重要です。
災害後は手元資金を増やすことを最優先に考えましょう。
災害が発生すると、経済産業省や中小企業庁・日本政策金融公庫のホームページ上に支援策が掲載されることがあります。
各支援策は、主に以下の4つが一般的です。
- 融資…一般よりも有利で借入ができる
- 保証…金融機関から借入に対して保証人として保証をする
- 補助金・助成金
- 相談窓口…上記支援策や対策を相談できる専用窓口の開設
手元資金を増やすのと並行して、支出を減らすことを考える必要があります。
仕入れや販管費など各項目について削減できるものはないか考え、公共料金や厚生年金保険料、民間保険料金、国税、地方税の支払いを猶予してもらえるように交渉してみましょう。
「事業継続力強化計画」の認定を受けよう
飲食店や小売業には、ここまでお話ししてきたように4つの災害リスクがあるので、平時から防災・減災対策に取り組むことで、リスクを最小限にすることが可能です。
しかしそのためにはまとまった資金が必要になるので、なかなか防災・減災対策ができないと悩んでいる経営者の方が多いのではないでしょうか?
近年大規模な災害が頻発している背景を受けて、2019年7月に「中小企業強靭化法」が施行され、それと同時に「事業継続力強化計画」の認定制度が開始されました。
事業継続力強化計画とは、経済産業大臣が中小企業や小規模事業者を認定することで、税制優遇や金融支援・補助金の支援策を受けることができます。
認定を受けるためには「計画書」の作成が必須となります。
計画書では、
- ハザードマップを活用した自然災害のリスクを把握
- 安否確認や避難実施方法など災害時の初動をどのように行うのか手順を記載
- 人員確保などに向けた事前対策
- 訓練の実施など具体的な実行性確保に向けた取り組み
上記4つを記載する必要があります。
詳しくは以下の記事でわかりやすく解説しているので、ぜひ飲食店・小売業を経営されている方は読んでみてください。
まとめ
防災・減災対策は企業が行うものとは限りません。
- 災害時に迅速で冷静な判断ができない
- 災害時にスタッフを出勤させてしまう
- 帰宅困難時の対処法が不明
- 災害後の資金調達ができない
飲食店や小売業は、上記4つの災害リスクを抱えています。
直接多くのお客様と接する飲食店や小売業も防災・減災対策に取り組むことで、災害時の被害を最小限にすることができます。
しかし防災や減災対策を行うには、まとまった資金が必要となるため、なかなか防災対策が行えないと悩んでいる経営者の方が多いのではないでしょうか。
「事業継続力強化計画」の認定制度を利用することで、防災・減災への取り組みに必要な資金を調達することができます。
認定を受けるためには計画書を作成する必要がある他に、必ず記載しなければいけない項目がいくつか存在しています。
記入もれがないように、補助金申請などをサポートする行政書士とともに計画書を作成すると安心です。